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これはもしかして……。ある結論がわたしの頭をよぎる。途端にチクチクと鈍い痛みがわたしの胸を刺していく。杏也先輩はもしかして、汐里先輩のこと……好きなの?
ずきりと鈍い痛みに息が苦しくなる。早くこの場から離れたくて、歩きだそうとするわたしの目の前に、黒い影が落ちる。
「阿左美先輩……」
「こんなところでなにしてるの?」
視線をそらしてうつ向くわたしをじっと見たあと、生徒会室の中を阿左美先輩がのぞく。
「そうか……で、その紙を提出しに来たんだよね?」
「そうです。でもタイミングが難しくて」
苦笑いしながら阿左美先輩を見上げると、ふっと笑いながら手を差し出す。
「じゃあ僕が預かるよ。僕も一応、学園祭実行委員の副委員長だからね」
「よろしくお願いします」
両手で紙を差し出すと、「了解」といいながら阿左美先輩が受け取る。頭をペコリと下げてその場を後にしようとすると、阿左美先輩に腕をつかまれる。驚きのあまり振り返りながら戸惑っていると、見たこともないような不気味な笑みを阿左美先輩が浮かべているから、背筋がゾッとする。
「僕は期待しているんだよ。演劇部がどんなことをしでかしてくれるのか」
「しでかすなんて……どういう意味ですか?」
「そうだよね。ここだと話しづらいよね」
生徒会室の中にいる那砂先輩たちに阿左美先輩が視線を送ってにやりと笑う。
「でも僕は、キミが仲間だと思っているよ」
「仲間……ってもしかしてあなたが……」
ひとつの不安が頭をよぎり、思わず大声をあげそうになるわたしの口元を阿左美先輩が手のひらでおおう。
「静かにしないとあいつらにバレちゃうよ」
相変わらず生徒会室の中は笑い声が響いているから、わたしと阿左美先輩の存在に気づいていないみたいだ。
「こんなところでする会話じゃないよ」
「そうでした……ごめんなさい」
「また今度ゆっくり話そう」
いつものやさしい顔で笑みを浮かべると、阿左美先輩が立ち去ろうとするから、今度はわたしが阿左美先輩を呼び止める。
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