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「本当の阿左美先輩は今、わたしの目の前にいる人……ですよね?」
おそるおそる聞くと、不気味な笑みを浮かべながらおかしそうに笑う。
「癒し系王子の僕のほうが好みかな?本当に人って勝手だと思わない?勝手にイメージを作って勝手に夢見て、それを押しつけてくる。だからみんなの期待に答えるのも大変なんだよ。でも花澄ちゃんと僕は同士でしょ?仲間でしょ?だからありのままの僕でいいよね」
「同士とか仲間とか……具体的に教えてください」
「いわないとわからない?それとも僕の口から聞きたいからおねだりのつもり?」
「……おねだりのつもりです……ダメ……ですか?」
阿左美先輩のさぐるような目がわたしをじっと見つめてくるから、後ずさりしそうになる気持ちをこらえながら、真っ直ぐに阿左美先輩を見つめ返す。
阿左美先輩の秘密を聞き出すためとはいっても、なりたくない自分を演じるのってやっぱりつらいな。演じるのが楽しいって思えてきたところなのに、演じるのがつらいって思うときってあるんだなって緊張感の中、妙に頭が冷静になっていく。
「キミからのかわいいおねだりなら仕方ないよね。僕たちの想いは一緒か、確かめないとね」
「はっ、はい。聞かせてください……阿左美、先輩」
かたずをのんで阿左美先輩の次の言葉を待っていると、わたしの肩に手を置いて内緒話をするように耳に顔を近づけるからドキリと心臓がはねる。
「僕たちは……那砂杏也を生徒会の副会長から引きずりおろしたい……仲間だよね」
やっぱり予感は当たっていた。首を傾けながらにやりと笑う阿左美先輩を直視しながら固まる。顔の熱がどんどんとあがっていってのぼせそう。言葉を発したいのになにもでてこない。わたし……今すごく怒ってるんだ。静かに怒りがこみ上げてくるけど、ここで爆発したらなにも聞き出せないまま終わっちゃう。怒りを静めるように細く息をはくと、ずっしりと重たく閉ざされた口をなんとか開く。
「阿左美先輩はなんで……杏也先輩を引きずりおろしたいんですか?」
「逆に花澄ちゃんはなんで?聞かせてよ」
質問に質問で返されるとは思わなくて、「えっと……」とうろたえながら次の言葉が出てこないことにどんどんとあせっていく。
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