7.犯人の正体とふくらむ想い

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「だからキミにお願いがあるんだ。学園祭をめちゃくちゃにしてよ。あいつが、生徒会が演劇部を認めたんだから演劇部が問題を起こせば、責任はあいつらにあるよね?派手に暴れちゃってよ」 「できない……」 「えっ?」 「そんなことできない!」 涙をぬぐいながら叫ぶと、予想外のわたしの答えに阿左美(あざみ)先輩がキョトンとしながら見ている。 「キミはあいつを困らせるために演劇部を利用しているんだよね?」 「そんな噂……信じるなんておかしいですよ。仮に杏也(きょうや)先輩をおとしめたいとしても、そんなまわりくどいことなんてするワケない」 「いってる意味がわからないな?もしかして……僕をだましたの?」 怒りに満ちた阿左美先輩の目が怖い。それでもわたしはこの問題から逃げたくない。真っ直ぐに阿左美先輩を見つめると、小さく息をはきながら重たい口を開く。 「わたしは杏也先輩が副会長でよかったって思っています。もちろん拓梅(たくみ)先輩が会長でよかったって。だって杏也先輩や拓梅先輩が助けてくれたから演劇部を作ることができたんですよ。感謝はしても、恨むことなんて絶対にしない。杏也先輩は自分のことより他人のことばかり心配して……みんながやりたくない損するような役回りを杏也先輩は平然とするような人ですよ。本当は傷ついてるくせに……誰よりも人を思えるのに自分の痛みには鈍いんですよ。さっき阿左美先輩は杏也先輩を努力してないなんていったけど、それは違う。誰よりも努力してみんなのことを考えてるからむちゃをする。でもそれを見せないのが杏也先輩なんです。だからみんな気づかない。好き勝手いってみんな杏也先輩を傷つける……それが許せない」 一気に想いを口にしてしまうと、それまでがまんしていた杏也先輩への気持ちまでこぼれてしまいそうで押し黙る。 「じゃあキミは……僕から聞き出すために、僕をだましたっていうの?」 「それはごめんなさい……謝ります。でもあなたのことは許せません」 「そうか……わかった。キミ本当は……」 くくっと笑いながらわたしの顔をのぞきこむように顔を近づける。
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