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「それなら傷ついた那砂杏也くんを見たくないよね?今の僕は、彼になにをするかわからないよ。キミは本当の僕を知りすぎちゃったから……さてどうしょう……計画変更だね」
楽しそうに笑う阿左美先輩に背筋が冷たくなる。でも杏也先輩を傷つけるようなことをするなら、わたしはやっぱり阿左美先輩を許せない。だからおじ気づきそうになる気持ちをふるいたたせるように手のひらを強く握りしめた。
「わたしが……わたしが杏也先輩を傷つけるようなことは絶対にさせない」
「その必要はありません」
部室のドアの方から聞きなれた声がして振り返ると、そこには杏也先輩が腕組みをしながら立っていた。
「杏也……先輩」
「あなたに助けてもらうほど、私は弱くありません。でもありがとうございます」
ふわりとやさしい笑顔を見せてくれた杏也先輩がわたしの横を通りすぎるから、とくんとわたしの心臓もやさしい音を奏でた。
「もしかして、今の会話全部聞いちゃった?立ち聞きなんていい趣味じゃないですか。副会長」
杏也先輩が現れても動じないどころか、この状況を楽しんでいるようにも見える阿左美先輩に、恐怖すら感じる。それと同時に、今の阿左美先輩なら杏也先輩になにをするのかわからないという不安がよぎる。
「相変わらず他人を巻きこむなんてあなたは本当に汚い人ですね。勝負なら正々堂々と真っ正面から挑めばいいじゃないですか。私はあなたに負けるつもりなどありませんが」
「君こそ。相変わらず人を不快にさせるのが得意みたいだね。それなら期待に答えてどんな手を使っても君を副会長から引きずりおろそうかな?僕こそが生徒会にふさわしいと思うんだ」
「そんなんだからあなたは私に負けるんですよ。あなたの本性などわかる人にはわかるというところでしょうか。そんなことより、あなたも映像部の部長なら彼女にあんなこといえないはずです。一生懸命な相手に失礼だと思いませんか?彼女に謝ってください」
「杏也先輩……わたしは大丈夫です」
「私はあなたにも怒っているんですよ」
「すみません」
しゅんとするわたしに、杏也先輩はムッとしながらもため息をついて阿左美先輩に向き直る。
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