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「わかった。ごめんね、花澄ちゃん。でもキミもいけない子だよ。僕をだますなんて、ひどいよね」
「それは……すみませんでした」
なんだかふに落ちないけど、この場をおさめるためと言い聞かせて阿左美先輩に頭を下げて、謝る。ふっと笑みをこぼしながら阿左美先輩が部室を後にしようとするのを杏也先輩が呼び止めた。
「学園祭は絶対に成功させます。あなたも実行委員の副委員長として、映像部の部長として恥ずかしくない姿を見せてください。私はこれでもあなたに期待しているんですよ、阿左美先輩」
唇を噛みしめてたえるような表情を浮かべながら阿左美先輩が無言で部室を後にする。残されたわたしと杏也先輩の間に気まずい空気が漂う。ほぼ同時に口を開きかけるから杏也先輩にゆずるように黙る。
「阿左美先輩が危険だとわかっていて、どうしてあなたはこんなむちゃをするんですか」
「ご心配をおかけしてすみません」
「心配などしていません。あきれているだけです」
いつもの杏也先輩の口調を聞いていると、自然と緊張の糸が切れて今頃自分がしたことに恐怖を覚える。杏也先輩のいうとおり、わたしはめちゃくちゃだ。
「杏也先輩は阿左美先輩のこと気づいていたんですか?」
「薄々ですが。阿左美先輩があなたに接触するのではないかとずっと監視していました」
「だからわたしが行く場所によく出没していたんですね」
「さすがのあなたでも気づきましたか」
「鈍感だっていいたいんですか?さすがのわたしでも杏也先輩の不審な行動に気づきますよ」
「そうみたいですね」とおかしそうに笑う杏也先輩にドキドキと心臓が鳴り響く。
「生徒会室の前であなた方が接触したのを見て確信にかわりました。あなたは私を副会長から引きずりおろしたい人物として噂になっていましたし、阿左美先輩は必ず行動に起こすと思っていました」
杏也先輩の言葉に昼休みに見た生徒会室での様子が頭をよぎる。仲良さそうにする杏也先輩と汐里先輩。わたしや阿左美先輩が生徒会室の前にいるのをわかっていても、仲良さそうなのを隠さなかったんだ。むしろ見せつけていたのかな?いやな感情がドロドロとわたしの心にはりつく。わたしの本心を隠すようにさらに杏也先輩を質問攻めする。
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