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8.部長失格
「テスト終わった~」
「とりあえず叫ぶのやめてよ」
「だってテストも終わって夏休みになればたくさん練習時間ができるんだよ!高校生になって初めての夏休みは演劇部のために捧げるんだから」
「はいはい。暑いのにさらにあつくなる」
あきれたように手であおぎながら凪彩ちゃんがバテている。
「とりあえず吹奏楽部の練習にいくわ」
「お疲れさま。頑張って」
よろよろと立ち上がり、重そうな足をどうにか動かして教室を出ていく凪彩ちゃんを見送った。吹奏楽部も学園祭に向けて本格的に始動している。当日の演奏だけじゃなくて、総合アクター部と演劇部用のBGMも演奏して録音しなくてはいけないからやることが多くて大変みたい。
吹奏楽部だけじゃなくて舞台の背景は映像部、衣装はハンドメイド部、チラシの絵を担当してくれるのは美術部と、たくさんの部活が関わってくれて、演劇部の舞台は作りあげられる。
もちろん生徒会だって主催者だから学園祭のすべてを取り仕切ってくれる。たくさんの思いを受け取って新生演劇部の初舞台が行われると思うと今から感動して涙が出そうになっちゃうよ。
わたしも席を立ち上がり、演劇部の部室へと向かう。
「土田さん、ヨーグルトだけで足りるの?」
「普通に食べちゃうと動きが悪くなるから。その代わり夜に3食分くらい食べちゃうから大丈夫」
「それならいいけど」
午後から演劇部の練習があるから、部室でみんなと昼食を食べていた。意外と大食いのわたしだから、大き目なお弁当箱を持ってきちゃったけど、今度からは土田さんみたいに練習のことを考えて小さなお弁当箱にしてもらおうかな?
「ところで部長は、台本を全部暗記した?」
「したと思います。たぶん?」
「なんで疑問形?ラストのせりふは?」
「それはこれからです」
結局、物語のラストのせりふは、少女にいわせたい言葉をわたしが考えることになった。元々演劇部を作りたいとわたしが最初の一歩を踏み出したわけだし、伝えたいことがあるから演じたいと強く思ったわたしの考えを3人が尊重してくれた形になったけど……これはこれでプレッシャーだし、責任重大なんだよね。
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