1.憧れの演劇部がない!?

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勉強だってスポーツだっておしゃれだって、なにもかもお姉ちゃんには敵わない。お姉ちゃんがほめられているのをわたしはただながめていることしか出来なかった。お姉ちゃんがほめられればわたしにとって自慢のお姉ちゃんだからうれしくないわけじゃない。それでもなんでも完ぺきにこなしてたくさんほめられるお姉ちゃんがうらやましかった。 わたしがどんなに頑張って努力しても身近にいる人がスゴすぎるからわたしには頑張ったこともお父さんやお母さんからしたらできて当たり前だと思っているのかもしれない。ほめてほしくて頑張ったことも次はもっと頑張りなさいといわれてしまう。いっぱい頑張ったのにもっと、もっとなんていわれてしまったらどれだけ努力すればほめてもらえるのかわからなくて、ゴールが見えない暗闇に迷いこんだみたいで怖くて心が痛かった。 だから努力しない自分でいいんだよ。とまるで自分をなぐさめるようになにもかもから逃げていた。そうすれば期待もされなくなるし、頑張りなさいともいわれなくなる。そうすると気分は楽になるけど、むなしさだけがどんどんと積もって心の中が重くなっていった。だから杏也(きょうや)先輩を見ていると、みんなから愛される拓梅(たくみ)先輩がそばにいて、比べられて心がチクチクと痛くならないのかなって心配になっちゃうんだ。 休み時間を使ってすでに拓梅先輩のファンクラブに入会したというクラスの子から拓梅先輩がどんな人なのか、どこが魅力的なのか聞いて回った。みんな口をそろえていっていたのが、みんなに愛される人懐っこい笑顔とモテるのに親しみやすくてみんなを平等に扱ってくれるやさしいところがある。それが拓梅先輩なのだと。 それに対して杏也先輩はめったに笑わないし、真面目で真っ直ぐな性格だから誰にでも厳しく怖いという印象がある。だから拓梅先輩の双子の弟でなければ間違いなく関わりたくない人という印象らしい。なかには杏也先輩に怒られたいという子もいて、杏也先輩は好き嫌いが分かれてしまう人なのかもしれないと思った。 今朝の風紀委員との身だしなみ月間の仕事も真面目にこなしてちゅうちょしそうなことにも足を踏み入れて正そうとする人。だから実質生徒会の権限を握っているのは、実は会長の拓梅先輩ではなく、杏也先輩ともいわれている。だからこそわたしには杏也先輩が悪い人には思えないけど、そのあまりの厳しさに反発する人もいるのは事実みたい。
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