25人が本棚に入れています
本棚に追加
「深く考えずに気楽に考えるがいちばんじゃない」
「ダメだよ。ラストは物語の重要なシーンなんだからしっかり考えてね。部長」
まったく反対の意見を水川さんと草野さんがいいだすと、やがて激論に発展してしまう。
「そろそろとめたほうがいいんじゃない」
一足先にヨーグルトを食べ終えて、土田さんがストレッチをしながらあきれたようにつぶやいた。
「えっと……わたしがしっかりしてないからごめんなさい」
「今それ関係ないから」
「だいたいなんでまだあたし達に敬語なの?かべを感じる」
「そうだよね。ごめん」
「すぐに謝らないでよね」
「本当にごめんなさい……あっ!?」
気まずい沈黙がしばらく続くと、何事もなかったように水川さんと草野さんも土田さんにまざってストレッチを始める。
わたしがしっかりしていないからみんなあきれてるよね。それに学園祭前の緊張感からか、全体的に演劇部の雰囲気がピリピリしたものになっている気がする。わたしが部長としてしっかりしていないからみんなの気持ちがまとまらないのかな?わたしが落ち込んでいてもしょうがないから、しっかり前を向いて真っ直ぐに学園祭に向けて突き進もう。
そして、具体的な解決策もないまま、夏休みへ突入した。連日猛暑日の厳しい暑さの中、どこの部活も学園祭へ向けて最後の追いこみとばかりに、ふんとうしている。今日はわたし達演劇部が、体育館の使用日になっている。練習を始めてから初めての舞台上での練習になる。
「うわ~っ!やっぱり舞台の上から眺める景色は違うね」
わたしひとりだけが、興奮ぎみにつぶやく。残りのみんなは総合アクター部の入部オーディションで一度、舞台上に立っている。だからわたしよりは興奮も緊張も違うのかな?聞いてみたいのに、なんとなく入部オーディションの話はさけてきたから切り出しづらい。
「照明をつけます」
「お願いします」
舞台上をスポットライトが照らす。太陽のようにまぶしいから、焼けてしまうほど熱い。
「適当に歩いてもらえますか」
一歩右へずれただけで、スポットライトがついてくる。
最初のコメントを投稿しよう!