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「急に大声を出さないでください」
「だって今日が楽しみで仕方がなかったんだよ。テンション上がるでしょ?」
「あなたはそれ以上あげないでください」
相変わらず仲のいいやり取りをする那砂先輩たちに演劇部のみんなが圧倒されている。
「どうしたの?元気ないね」
「そんなことないです。おっ、おはようございます」
慌ててあいさつを返すと、那砂先輩たちの後ろに立つ阿左美先輩が目にはいる。あの騒動以来、当たり障りなく学園祭実行委員の仕事をしているみたいだし、杏也先輩も阿左美先輩を警戒していないみたいだから、阿左美先輩が今のところ怪しい動きをしていないことにホッとする。だからってまだ阿左美先輩のすべてを信用できない。わたしがじっと見ていることに気づいても、阿左美先輩は目をそらすことなく微笑むと、わたしに近づいてくる。警戒しながらもわたしに近づく阿左美先輩をじっと見ていると、くすりと阿左美先輩が笑った。
「そんなに警戒しないでほしいな」
「……」
「せっかくキミにプレゼントがあるのに」
差し出されたものをしぶしぶ受け取る。
「演劇部用の背景映像だよ」
「ありがとう、ございます」
「映像部が当日も全面協力するからよろしくね。演劇部の部長さん」
あまりにも演劇部に協力的な阿左美先輩に驚いていると、ふっと笑いながら阿左美先輩がわたしの耳元に顔を近づけてくる。
「学園祭が終わるまではなにもしないから安心してよ」
「その言い方じゃ、学園祭が終わったら安心できないじゃないですか」
「どうかな?」と微笑む阿左美先輩がさらに口元に手をそえながら内緒話するように小声で話しを続ける。
「副会長が僕の弱みを握っているからって演劇部に協力するようにっておどしてくるんだよ……本当に彼は怖いよね。ねぇ、那砂杏也くんのどこがいいの?」
「はっ!?」
阿左美先輩の言葉に大声で反応しちゃって慌て口元を手でおおった。
「僕の方がまだましだと思うんだけどな」
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