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「演劇部としてみんなが心をひとつにして学園祭という目標に向かって突き進んでいかなくちゃいけないのに、花澄ちゃんだけがひとりで突き進もうとしているみたいに見えちゃうんだ。なんで花澄ちゃんは、部員に遠慮して、部員の顔色をうかがっているの?」
自分ではそんなつもりはなかったのに、汐里先輩から見たらわたしはそんな風に映っていたんだ。ということは、演劇部のみんなにもわたしがそんな風に映っていたの?
「わたしは……わたしのわがままにみんなを付き合わせてしまってるって思っちゃうし、もしも誰かひとりでもいなくなったら困るって思っちゃうこともありました。だから本音で話せないこともあったのかもしれません」
「それって……花澄ちゃんがいちばんみんなを信用していないよね。わたしなら、そんな人を頼りたいとも思わないし、何より悲しいよ」
「悲しい?」
「そうだよ。もっと信用して、頼って。わたしってなんなの?って悲しくもなっちゃうよ。でもいってもむなしいだけだよって自分にいいきかせちゃうの。自分が疲れて傷つかないためにね」
「わたし……みんなを傷つけてたの……」
水川さんにもかべがあるっていわれた。草野さんだってあきらめたような顔をすることが多い。それは、わたしが本当の自分でみんなと向き合わないから。わたしも本当の自分を出すのが怖かったから逃げてた。でもそれは本当にみんなを信頼していなかったから。すれ違った思いのままでひとつの目標にみんなでたどり着けるはずがないよね。
「もしかしてそんな演劇部の雰囲気が土田さんを余計に追いつめちゃったのかも……しれません」
「きっとどうにかしないとっていうプレッシャーもあったのかもね。それが結果的に自分を責めることになったのかも」
「どうしよう……どうすれば……」
「まずは演劇部の部員と本音で話すことかな?学園祭前までに解決できそう?」
「解決してみせます」
「その言葉が聞けて安心した」
「話しを聞いてくださり本当にありがとうございます」
いすから立ち上がり、頭を深々と下げた。汐里先輩ってきれいなだけじゃなくて、強くて頼りになる人だなってやっぱり憧れる。でもだからこそわたしは汐里先輩に敵わない。
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