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「そうだ。忘れてた。はい、これ」
手渡された紙を広げると、そこには白いワンピースのデザイン画が描かれていた。
「わたしがデザインした花澄ちゃんの衣装だから」
「汐里先輩がデザインしてくれたんですか?」
夏休み前にハンドメイド部の人がわたし達の衣装を作るために採寸に来てくれたことがあったけど、まさかデザインを考えてくれたのが汐里先輩だなんて知らなかった。
もう一度まじまじとデザイン画を見つめた。少女のはかなくも強いイメージにぴったりな衣装に胸がときめく。
「これをわたしが着るんですね」
「そうだよ。演劇部の衣装はハンドメイド部のデザイン担当のわたしがしっかりとイメージを考えながらデザインした自信作なんだから」
「うれしいです」
「実は少年の衣装がいちばんの自信作なんだ。背も高くてモデルのようにスタイルがいい彼女だからこそ考えられたデザインだなって思っているの。だから早く舞台上で見てみたい」
汐里先輩の言葉がうれしくて、じわりと目の周りが温かくなっていく。
「みんなが舞台上でわたしがデザインした衣装で夢のような空間を作ってくれる。演劇部のための衣装だってわたしの作品なの。だからわたしだって演劇部を応援しているひとりだって忘れないでね」
「はい。ありがとうございます」
みんなに支えられて夢が大きくなっていく。ひとりでは小さな力でもみんなで力を合わせれば大きな勇気に変わる。だからわたしはみんなのたくさんの想いを受け取りながら、学園祭の舞台を成功させてみせる。
「さてと、そろそろ生徒会室に戻らないと。拓梅と杏也が立場逆転になって、拓梅がわたしに泣きついてくる頃かな」
「なんだか光景が目に浮かびますね。汐里先輩、今日はありがとうございました」
こんなにすてきな人なんだから杏也先輩が好きになっちゃうのもわかるなと思うと、ずきりと心が痛む。
「それはわたしも拓梅先輩をよく理解してますってことかな?拓梅も花澄ちゃんのことかわいがってるみたいだし。これは花澄ちゃんに嫉妬してるから聞いているんだけど」
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