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「えっ!?あの……まさか……」
「でもダメだよ。拓梅はわたしのものだからね」
「それはつまり……汐里先輩は、拓梅先輩のことが……その……」
好きという言葉を発するのが恥ずかしくて黙るわたしに、汐里先輩がくすりと笑う。
「そうだよ。小さい頃から拓梅が好きなの。杏也はわたしが拓梅のこと好きだって気づいているのに、かんじんの拓梅はぜんぜん気づいてくれないの!そこが拓梅らしいけどね。だからライバルは今からけ落とさないとね」
「えっ!?わたしは……違います」
「そう。それなら安心かな」
汐里先輩がまさか拓梅先輩を好きだったなんて知らなかったな……ってことは……杏也先輩の片想いになっちゃうの!?
杏也先輩は汐里先輩が好きだけど、汐里先輩は拓梅先輩が好きで……拓梅先輩は?
だんだんと混乱して頭のなかがごちゃまぜになってきた。こんな少女まんがのような展開って実際にあるんだって、少し興奮ぎみになってきたけど、そうか。杏也先輩は汐里先輩の気持ちに気づいているんだ……どんな気持ちで汐里先輩を見ているのかな……なんて同情している場合じゃないよね!わたしは?わたしの気持ちはどうすればいいの?これはチャンスってこと?違うのかな……もうなにがなんだかわからない!とさらにパニックになる。
「なんか大丈夫?いきなりすぎたよね」
「びっくりしすぎて……大丈夫じゃ……ないです」
「本当に花澄ちゃんっておもしろいね」
「そっ、そうですか?」
苦笑いしながらどうにかごまかしたけど、まだ心臓がドキドキとうるさいくらい鳴り響いている。
汐里先輩が生徒会室へ帰っちゃったからまたひとりになった。汐里先輩の言葉を何度も思い返す。人との距離感って難しいな。磁石みたいだって例えられているのを聞いたことがあるけど、近すぎても離れすぎてもダメってことかな?おもえば凪彩ちゃんは幼なじみで小さい頃から常に一緒だったから、もう言葉を交わさなくてもお互いのことを理解できちゃう仲だから凪彩ちゃんといるとつい居心地がよすぎて甘えていた部分もあるのかも。新しく誰かと仲を深めるって難しいな。新しくお友達を作る方法っていう説明書があって、正しく実行すればお友達の出来上がり!なんて簡単にいくものではないよね。
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