9.アイス先輩があますぎる!?

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さっきからスマホをじっと眺めてはそわそわするから落ち着かなくて、無駄に動いてみたり、突然部室の掃除を始めたりと挙動不審な行動をしながらやっと文章をスマホに打ちこめた。 【明日はミーティングをします。これからの演劇部についてみんなで話し合いましよう。】 ちょっと堅苦しいけど、これで演劇部全員に送信。明日はちゃんと自分の本音も話しながら、みんなの話しもちゃんと聞こう。今からドキドキするけど大切なことだもんね。 わたしがいつまでも送信できない間に、いつの間にか窓の外は暗くなっていた。どうしよう?わたしが帰らないと生徒会の人も帰れないよね。慌てて荷物をまとめていると、ドアをノックする音と同時にドアが開く。と、あきれたような顔の杏也(きょうや)先輩が入ってくるから、ドキッと心臓がはねる。 「やはりまだいましたか。早く帰りますよ」 「はい。すみません。早く帰ります」 「私は帰りますよといったのですが」 意味がわからなくて首を傾げていると、あきれたように杏也先輩がため息をつく。 「あなたに理解できるように説明すると……」 咳払いをすると、ムッとしたような顔でわたしを見るから、怒られるのかと思って身構える。 「もう暗いですし、遅いので、私が……駅まで送りますってことです」 「へっ!?」 予想外の言葉に変な声が出ちゃったけど、そんなことも気にする余裕がないくらい、頭の中がパニックになっている。 「つまり……一応あなたも女の子ですし、夜道は危ないですし……それにまたなにか問題を起こされてもという意味で……決してその……」 こんなに顔を赤くしながら挙動不審な杏也先輩が見れるなんて……レアじゃない。なんてなぜか頭が冷静になっていく。杏也先輩って慌てるとじょう舌になるんだ。なんて珍しい杏也先輩をひとつも取りこぼさないように覚えておこうって気持ちがわいてきて、じっと見つめてしまう。 「それはつまり、一緒に帰ろうって誘ってくれてたりします?」 「なっ!?」 手の甲で口元をおさえる杏也先輩の顔が、どんどんと赤くなっていく。「あなたはどうして自分の都合のいいように解釈するんですか」といったっきり杏也先輩が押し黙る。わたしまで急に恥ずかしくなってきた。なんて大胆なことを口にしちゃったんだろう。恥ずかしい……今すぐにでも時間を戻したい。そんな発言をしちゃう自分にダメだよって教えてあげたい。顔の熱でのぼせそうだよ。
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