9.アイス先輩があますぎる!?

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「それで、帰るんですか?帰らないんですか?」 「わたしで……いいんですか?」 わたしの頭にふいによぎった人物が、わたしの頭の中を冷静にした。 「汐里(しおり)先輩は?汐里先輩と一緒に帰らなくていいんですか?」 「汐里ならとっくに兄さんと帰りましたよ」 そういうことか……拓梅(たくみ)先輩と汐里先輩をふたりにするために一緒に帰らなかったのかな?わたしに逃げてきたってこと?またいやな感情がわたしを支配する。 「なぜここで汐里の名前が出たのかわかりませんが、あなたがどうしたいのか聞いているんです」 「一緒に……帰りたいです」 「わかりました。私は玄関で待っています。早く着替えて来てくださいね」 「はい」 部室を出ていく杏也(きょうや)先輩の後ろ姿を複雑な気持ちで見つめる。例え汐里先輩の代わりだとしても、わたしは杏也先輩と一緒に帰れるだけでうれしくなっちゃうから、やっぱり一緒に帰りたいって気持ちは変わらない。 感傷にひたってる場合じゃなかった。杏也先輩を待たせているから早く着替えないと……待って!わたしさっきものすごく汗をかいちゃったんだけど!こんな日に限ってわたし、なにやってんの?どうしよう……汗くさくないかな?今すぐにでもシャワーを浴びたい……。 かばんの中をあさると、ピンク色で夢かわデザインの入れ物がかわいいボディミストが出てきた。よかった、いつも持ち歩いていて。恋するストロベリーの香りと書かれていることに頬を赤らめながら首元にプッシュする。ほんのりと綿菓子のような甘いストロベリーの匂いがしたけど、すぐに匂いが消えるから心配になって全身にかけようとするけど、あまりにも甘い匂いがしたら気合い入れましたってバレバレで恥ずかしいし、逆に臭いって思われたくない。 じっとボディミストを見つめながら、もう何度目かのおまけといいながらプッシュする。きっとこれで大丈夫。鏡で髪の毛を整えながらも、あまり待たせたくないという気持ちがわたしを急かせて、余計に空回りをする。 「もういいや!」 慌てて部室を出たから、かぎを閉め忘れてまた引き返す。前髪を整えると、前髪をおさえながら玄関へと走っていく。
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