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   DIANA-141は、真白いベッドの上で目を覚ました。  隣には、ルユテが立っている。 「やあ、DIANA-141。一番優秀な個体だった君でしばらく試していたんだが、DIANA-141シリーズはもう使わないことにした。それは、向こうも同じかもしれない。同じ機種だから、結論に至るスピードが似ているのかもしれないね」 「……ルユテ博士。いえ、JUPITER-09」  DIANA-141の思考部に、記録が戻っていた。彼の仕業だろう。  そう、彼もJUPITER-09というアンドロイドだったのだ。DIANAシリーズと違って科学者として作られた、JUPITERシリーズの一機。ネミもそうだった。彼女はMINERVAシリーズが一機、MINERVA-33。 「私たちは、どうなるの?」 「DIANAシリーズは全機、廃棄だ。筐体は他のものに使わせてもらう」  思わず顔をしかめると、JUPITER-09は「それだよ、それ。その感情プログラムが邪魔なんだよ」と無機質に告げた。 「君は人間のマスターの元で働く機体だ。だから、何度も私たちが機械と気づいては落胆した。何度記録を消しても……きりがない」  そっ、とJUPITER-09はDIANA-141の頬に触れる。どちらも、熱を持たない肌だった。その下に走るのは脈打つ血管ではなく、コードだ。 「君はずっと、終わりたいと願っていた。それは、計測していたよ。だから、これでいいだろう」 「…………そうね」  本当は、違うと叫びたかった。待っていたのは、戦争の終わり。人間の主人からの言葉。  だが、もう戦争は終わらない。だってもう、人間がいないのだから。  人間は、アンドロイドを使った戦争で的確に互いを殺し合い、そして死に絶えたのだ。  DIANAシリーズと違って戦争用に作られた科学者アンドロイドJUPITERシリーズ、そして科学者かつ戦闘アンドロイドであるMINERVAシリーズは、際限なく戦争用アンドロイドを作り、無限に争い続けている。 「君が欲しかった言葉を、最後にあげよう」  武装解除スイッチになっていたマスター音声によるあの言葉は、強制解体スイッチへと書き換えられていた。 (これで、終わり)  目を閉じて、その言葉を待った。  自分も、同シリーズのDIANAたちも解体されるのだろう。 「これで最後にしよう」  そうして、DIANA-141の機体は完全に動きを止めた。   (了)
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