1

1/1

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

1

 人間の戦争をアンドロイドが肩代わりするようになって、幾星霜経ったのだろう。  アンドロイド破壊特化型アンドロイドDIANA-141は、夜の街を歩いていた。  もう大規模な戦闘は行われない。今の主流はアンドロイド同士による、ゲリラ戦だ。  内部サーチが反応した途端、目の前に少女型のアンドロイドが現れていた。  同じ顔。同じ体。  ためらいが頭をかすめた瞬間、レーザー銃で左腕を撃たれる。  DIANA-141は続く攻撃を跳躍して避けながら、右手でレーザー銃を抜き放つ。敵の攻撃をかいくぐりながらレーザーを頭に貫通させて、敵を仕留めた。  倒れたアンドロイドは、ばちばちと電気を放っている。 「…………」  言葉もなく見下ろし、DIANA-141は念のためにもう一度頭にレーザーを放った。    基地に戻ると、茶髪の青年と赤毛の女性が出迎えてくれた。どちらも白衣に身を包んでいる。 「おかえり、DIANA-141。おや、怪我をしているじゃないか」  青年博士ルユテは心配そうにDIANA-141に駆け寄り、同じく博士である女性ネミは腕を組んで眉をひそめているだけだ。 「早速、治療を。治療室に行って」 「はい」  ルユテの言葉に応答して、DIANA-141は言われたとおりに治療室に向かった。治療室には、アンドロイド治療用の機械だけがある。  その無機質な空間にホッとして、DIANA-141は診療台に横たわる。  左腕の欠損。そう重傷というわけではない。パーツを取り替えればいいだけだ。  だが、同じ顔の――同じ型のアンドロイドを殺したという事実が、DIANA-141を苛んでいた。機械に心はないのに、じくじくと胸が痛むのはどうしてだろう。  
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加