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危険なゲーム(1)童顔の悲劇?
涼真はムッツリと口をへの字にしていた。
「社会人なわけないでしょう?いいから、どこの学校か言いなさい。高校に入ったからって、夜遊びはだめだよ」
警察官が諭して来る。
ジーンズとTシャツでブラッとコンビニへ出かけたら、パトロール中の生活安全課少年係の刑事に未成年者に間違われて、交番へ連れて行かれたのだ。何度説明しようが、信じてくれない。
生憎、両親は旅行中でおらず、迎えに来てくれる「保護者」とやらがいない。
仕方なく会社の誰かの名を出そうとしたが、迷った。夜遅くに女性に頼んで来てもらうのは危ない。なので、悠花はだめだ。雅美は男だが、見た目は誰よりも美人な女性なので、すっかり涼真の頭の中では女性となっているため、これもだめだ。上司に手間をかけるのは申し訳ないので、室長もだめだ。残るは湊だが、湊は警察と仲がいいとはいえないので、どうだろう?
そう考えて、迷いまくった結果湊にしたが、既に、かなりの時間が経っていた。
(免許証はいつも持っておかないとなあ。財布を持って出れば良かった。スマホ決済なんて、もう2度とするもんか)
心の中でぶつぶつ言いながら、刑事のお説教を仕方なく聞いていると、ようやく湊が来た。
「あ、湊」
交番に入って来た湊に気付いて涼真が声を上げると、刑事が目を向ける。
「何やってんだ、涼真」
「コンビニに行こうとしたんだよ。スマホで払おうと思って、免許証も持ってなかったから」
刑事が湊の免許証を確認し、涼真が湊に頼んで持って来てもらった入社式の写真を見る。そして、忙しく写真と涼真とを見比べた。
「え、マジか!?」
交番の警察官も集まって、全員で見比べ、驚愕の声を上げた。
「はい。彼は同僚の保脇涼真。成人ですよ」
「申し訳ありませんでした!!」
警察官らは、一斉に頭を下げた。
涼真は童顔だ。スーツを着ていても、高校の制服かと思われる時がある。ましてやジーンズにTシャツなんて着ていれば、中学生としか思われない。
慣れていても、悲しかった。
「悪いな、突然」
書類に記入し、交番を出た涼真と湊は、並んで歩いていた。
「いや、別に」
そう言う湊の唇の端が、震えている。
「それで、今日の事は、ちょっと内緒にしてくれないかな」
「わかった。
でも、いいんじゃないか。中年にしか見えない高校生とかよりも。それに、若い子に警戒されないし」
「慰め方が微妙だな。でも、ありがとう。
ここでいいよ」
「だめだろ、家まで送る。家に着く前にまた補導されたら――クッ」
「ありがとうな!くそ!」
涼真はヤケクソになりながら礼を言った。
「いや、すまん。あれだ。きっとそれが役に立つ事もある」
「本当か?」
「ああ」
「本心から言ってるのか、湊?」
「……もちろんだ」
「おい、目を見ろ」
「星がきれいだぞ、涼真」
しかし彼らはまだ知らなかった。翌日入った仕事で、このやり取りの通りになるとは。
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