危険なゲーム(1)童顔の悲劇?

1/1
前へ
/45ページ
次へ

危険なゲーム(1)童顔の悲劇?

 涼真はムッツリと口をへの字にしていた。 「社会人なわけないでしょう?いいから、どこの学校か言いなさい。高校に入ったからって、夜遊びはだめだよ」  警察官が諭して来る。  ジーンズとTシャツでブラッとコンビニへ出かけたら、パトロール中の生活安全課少年係の刑事に未成年者に間違われて、交番へ連れて行かれたのだ。何度説明しようが、信じてくれない。  生憎、両親は旅行中でおらず、迎えに来てくれる「保護者」とやらがいない。  仕方なく会社の誰かの名を出そうとしたが、迷った。夜遅くに女性に頼んで来てもらうのは危ない。なので、悠花はだめだ。雅美は男だが、見た目は誰よりも美人な女性なので、すっかり涼真の頭の中では女性となっているため、これもだめだ。上司に手間をかけるのは申し訳ないので、室長もだめだ。残るは湊だが、湊は警察と仲がいいとはいえないので、どうだろう?  そう考えて、迷いまくった結果湊にしたが、既に、かなりの時間が経っていた。 (免許証はいつも持っておかないとなあ。財布を持って出れば良かった。スマホ決済なんて、もう2度とするもんか)  心の中でぶつぶつ言いながら、刑事のお説教を仕方なく聞いていると、ようやく湊が来た。 「あ、湊」  交番に入って来た湊に気付いて涼真が声を上げると、刑事が目を向ける。 「何やってんだ、涼真」 「コンビニに行こうとしたんだよ。スマホで払おうと思って、免許証も持ってなかったから」  刑事が湊の免許証を確認し、涼真が湊に頼んで持って来てもらった入社式の写真を見る。そして、忙しく写真と涼真とを見比べた。 「え、マジか!?」  交番の警察官も集まって、全員で見比べ、驚愕の声を上げた。 「はい。彼は同僚の保脇涼真。成人ですよ」 「申し訳ありませんでした!!」  警察官らは、一斉に頭を下げた。  涼真は童顔だ。スーツを着ていても、高校の制服かと思われる時がある。ましてやジーンズにTシャツなんて着ていれば、中学生としか思われない。  慣れていても、悲しかった。 「悪いな、突然」  書類に記入し、交番を出た涼真と湊は、並んで歩いていた。 「いや、別に」  そう言う湊の唇の端が、震えている。 「それで、今日の事は、ちょっと内緒にしてくれないかな」 「わかった。  でも、いいんじゃないか。中年にしか見えない高校生とかよりも。それに、若い子に警戒されないし」 「慰め方が微妙だな。でも、ありがとう。  ここでいいよ」 「だめだろ、家まで送る。家に着く前にまた補導されたら――クッ」 「ありがとうな!くそ!」  涼真はヤケクソになりながら礼を言った。 「いや、すまん。あれだ。きっとそれが役に立つ事もある」 「本当か?」 「ああ」 「本心から言ってるのか、湊?」 「……もちろんだ」 「おい、目を見ろ」 「星がきれいだぞ、涼真」  しかし彼らはまだ知らなかった。翌日入った仕事で、このやり取りの通りになるとは。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加