危険なゲーム(3)作戦会議の夜

1/1
前へ
/45ページ
次へ

危険なゲーム(3)作戦会議の夜

 皆で、そいつらで間違いない、と意見が一致した。 「しかし、流石は涼真君!」  悠花は褒めているのだが、涼真には褒められている気がしないでいた。 「相手に違和感を抱かせずにしゃべってもらうなんて、特技だぞ?」 「そう言うけどね」 「羨ましいわ。私の所に来る人って、全員、緊張して……はあ」  雅美の所にはそういう男子しか行かなかったのだ。 「俺も、普段から避けられたり緊張されるからな」  湊はあっさりとそう言った。 「私、それよりも経理の不備とかばっかり見付けちゃって」  悠花が苦笑した。 「な。自信持てって」  湊がそう言って肩を叩き、涼真は微妙な気分で一応頷いた。 「じゃあ、今月2日に花園神社の裏で何があったかを調べて、そこにどの生徒が関わっていたか調べれば済むな。  室長」 「わかりました。そちらの調査は、警護課に回しましょう」  錦織が言って、ミーティングは終わった。 「あ、涼真。送って行くよ」 「いいよ」 「どこから見ても高校生だからな。補導されたら困るだろ」 「くっそう!ありがとうな!」  それで解散して行った。  吉村達4人グループは、真面目な顔で額を寄せ集めていた。 「あれ、絶対に俺達を探してるよな」  山田が言う。 「学校のやつらの中にも、怪しんでいるやつはいそうだぞ。急にやめたから」  加藤が言うと、 「関係ないところでやっとくか?」 と井上が言った。 「いや、あいつらが手分けして探してたらまずいだろ」  吉村は言って、溜め息をついた。 「くそ、ついてない」  彼らはいつも通り、今月2日の夜、花園神社付近で自転車によるあおり運転をしていた。花園神社近くのラブホテルから出て来た車がターゲットだ。  囲んでゆっくりと走ったり、車内の2人の顔を録画して焦ったような顔を楽しみ、生卵をぶつけて横道に逃げこんで逃走に移る。  いつもならこれで上手く行く。  それで、動画を編集して、「不倫ですかあ」とか「お疲れ様」とかふざけたキャプションを付けてアップする。  なのにこの日は、通行人にぶつかった。神社の裏で、スッと出て来た若い男とぶつかり、慌ててお互いの荷物をかき集めて走り去ったのだ。  しかしその翌日から、チンピラが学校の周囲に現れるようになってしまった。 「あれかな」  ぶつかった吉村が言い、皆、それを思い浮かべた。透明なラムネの瓶に入った、色とりどりのドロップだ。  こちらの荷物に紛れていたのに気付いたのは、そこから離れて、フードとフェイスマスクを取った後だ。 「あれ、何だろう」 「見た目通りの飴玉ってわけじゃなさそうだし」 「まさか、麻薬?」  全員、黙り込む。 「なめてみるとかできないし」 「誰かになめさせるとか?」 「いや、それはまずいだろ」 「警察に届けるのもなあ。どこでどうしたって言わないといけないし」 「拾った事にすれば?」 「飴玉を拾って交番に届けるか、普通」 「怪しまれるな」  頭を抱えて、唸った。  フードとフェイスマスクで、顔がわからないようにしていた彼らだが、ぶつかった時に自転車に貼ってある「自転車通学許可証シール」が見られていたのだ。あおりをするときは黒い紙で覆っているのだが、ぶつかって荷物を拾い集める時、至近距離だったので、めくれたのが見えたのだ。  その事は吉村達も気が付いていた。 「校門の前に置いておくのは?」 「職員とかが捨てないか?ゴミだと思って」  考えはまとまらなかった。  
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加