危険なゲーム(4)捕縛

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危険なゲーム(4)捕縛

 吉村達は、花園神社の近くに来た。周囲は暗く、たまに通りかかる通行人がいるくらいで、あまり人影は見当たらない。  その後を尾いて来ていた涼真は、物陰からそれを眺めていた。 (何してるのかな)  放課後、4人は思いつめた様子で口数も少なく学校を出ると、ここへ来たのだ。  そして今、何か言い合っているのだが、遠くて涼真の所からは聞こえなかった。  その内、彼らは肩を落とし、そこから立ち去ろうとした。 (何をしに来たんだ?)  わけがわからないが、涼真は距離を置いて後を追う事にした。  その前に、湊に連絡を入れる。  顔を合わせても不自然でない涼真が背後に付き、他は別の方向から付いて行っていた。 「今、花園神社の裏に来たんだけど。何か言い合って、すぐに帰るみたいだ」 『何かしたのか?』 「いいや。来て、何かちょっと言い合って、おしまい。何だろう」 『何かあるか?もしくは、誰かいるか?』  涼真は周囲を見回した。 「これと言って――あ。学校の前に来てた集団の1人が神社の中にいたけど……どうしよう。こっちに走って来たぞ!」  ちょうど拝殿の奥から出て来たチンピラの1人が、涼真を見付け、走って来る。  気のせいかと周囲を見回すが、どうも、そいつが目指しているのは自分らしい。 「待て、コラ!」 「え、何で!?」  吉村達の方を見ると、涼真と今の声に気付いたのか、振り返っている。 (逃げろと言うべきか!?でも)  迷う間に、チンピラは涼真に掴みかかり、 「お前か!?」 と言い、涼真に何も言わせず、そのまま拘束するようにして、そばにとめてあった車に押し込んだ。そして、走り去る。  それを、吉村達は呆然と見ていた。 「え、今の何?誘拐?」 「学校に来てたやつらだったよな」  顔を見合わせて、青ざめる。 「どうしよう」 「警察に?」 「何て」  そこに、左手から湊が走って来る。 「あ、新任の先生だ」 「あれ?向こうから来るの、保健の先生だろ?」  右手からは雅美が走って来る。 「おい、もしかしてあれもそうか?」  前方から来るのは悠花だ。  彼らは、ますますこの状況に混乱した。 「おい!」 「ふぁい!!」  湊に睨み据えるようにして声をかけられ、裏返った声で返事をした。  雅美と悠花も到着し、囲まれている。 「あいつがお前らと間違われて連れて行かれたのはわかってるよな?今月2日の夜、ここで何があった」  吉村達は震えていた。 「何で、先生が、そんな」  井上が言うのに、雅美は笑った。 「私達が、教師や事務員だと思う?」  吉村達は、ビビった。秘密組織か何かと誤解していた。 「ああ?」  湊が、つながっていた電話から聞こえて来た声を、スピーカーで皆に聞かせた。 『お前、2日の夜にぶつかったやつか』  それで、吉村達は一斉に顔色を悪くして、オドオドしだした。  その様子を見ながら、返事をする。 「そうだったら?」 『アレを持って来い』  吉村が、カバンをギュッと押さえた。 「あれ?」 『しらばっくれる気か。キャンディだよ。こいつが死ぬぞ』 「……いつ、どこへ行けばいい?」 『……ええっと、午後10時に、花園神社の中の拝殿の中だ。  警察に知らせたらどうなるかわかってるだろうな』 「ああ、わかった」  それで電話は切れた。 「さて」  湊と雅美と悠花の包囲が、狭まった。 「ひいぃ!」  吉村達は、笑顔が怖い事もあると、初めて実感した。    涼真はガムテープで、口を塞がれ、両手を拘束され、後部座席に転がされていた。  電話を切ったチンピラは、アドレスを見て、涼真に哀れみの目を向けた。 「篠杜、木賊、竹内、錦織の4つだけか。お前、友達少ないんだな」 「うー、うううー、うううううー」  仕事用の、余計なものが入っていない携帯だ。  友人はいると抗議したいが、ガムテープでできない。  涼真の抗議は全く通じず、チンピラは自分のスマホを出して、どこかに連絡した。 「あ、山田っす。今神社で――」  そう報告を始めるのを聞きながら、涼真は、 (キャンディって何だろう?  ああ、もしこの姿で殺されたりしたら嫌だなあ) と考えていた。
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