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「晴れて良かったね。去年は傘さして愚痴るしかなかったもんね」
砂や泥がつもったベンチをもう一度手で払いながら、遼子が言う。
「せっかくのしし座流星群の日に当たったのに、雨のせいで見られませんでしたとか残念すぎるもん」
「ほんとそれな」
「つまり今日に当たったのも、晴れたのも、俺の日頃の行いが良かったからってことでいいよな!!」
「……」
「……」
「おい達也!遼子!頼むからツッコんで、悲しいから!!」
涙目になっている翼は無視である。ほんともう、翼ときたら昔からなのだ。幼稚園の頃からジョークや悪乗りが大好きなのだが、それがまた寒いこと寒いこと。お前は一体いくつのオッサンなんだ、ということをすぐ言ってみんなにハリセンツッコミを食らうか、華麗にスルーされるのである。毎度のことなのに全く懲りてないらしい。この調子だと、おじいちゃんになっても同じように寒いギャグを飛ばして孫に叱られていそうである。
そうだ、せっかくなら翼がおじいちゃんになるまで元気でいられますように!みんなに笑ってもらえるジョークが言えるようになりますように!というのもお願いしてやろうかと決める。人のためのお願いは、ノーカウントでいいはずだ、多分。
「学校でちらっと教えてもらったくらいのことしか知らないんだけどさ。しし座流星群って、本当は毎年見られるんだよな?」
しくしくしながら望遠鏡のセッティングをする翼の背を撫でつつ、達也は言う。
「でも、見られるかどうかは毎年違うんだっけ?」
「そうだな。十一月十四日から二十四日くらいまで毎年見られるはずだけど、天気の関係とかもあるし毎年日本から見られるとは限らないみたいだ」
身体の大きさのわりに体力はないが、そのかわり翼の知識は豊富だ。学校のテストでも、特に理科で百点を取らなかったことがないのを達也は知っている。その翼のテストをこっそりカンニングしようとして、先生の雷が落ちたのが確か四年生の時のこと。あの時の先生の目はマジで怖かったなーと、あんまり反省していない達也はひっそりと思う。
そんな達也はといえば、体育以外のテストは非常に苦手というわかりやすい少年であったりする。特に、抜き打ちの漢字テストなんてものは真面目にやめてほしいものだ。直前で範囲部分を丸暗記でもしないと、平均点を取ることさえ叶わないというのに。そもそも漢字なんて、最低限読めれば書けなくたっていいではないかというのが持論である。大人だって、書けない奴は書けない。クイズ番組をよく見ていたので知っているのだ。
「出現してても、極大になるタイミングじゃないと人間の目には見えないことが多い。しかも、観測できるのは一時間くらいだ。数個程度しか流れないこともあるから、そのタイミングを逃さずしっかり観測するのが大事だな。はい、遅刻すんませんでした!」
「わかればよろしい、わかれば」
「いえーい、言われてやんの翼ー!」
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