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三 チェリー
彼女と出会って、僕は、この世に生まれ来るタイミングを間違えたことを心から憎んだ。
本来なら、常識的に考えて、諦めるべき恋なのだ。
だってあの子は女子高生だぞ。友人に打ち明けたのならば、絶対、何を考えているんだって言われるに決まっている。
そしてあの子だって、急に僕に話しかけられようものなら、「こいつはなにを言っているんだろう」って、思うに決まっているんだ。
それでも、抱いてしまった気持ちに、嘘はつけない。
彼女の、髪がきれいだ。触れたいと思ってしまう。
彼女の、瞳がきれいだ。その瞳に僕の姿を映してくれるとしたら、どんなに嬉しいことか。
そしてやっぱり、彼女の、口元が大好きだ。彼女の口角が上がったり下がったりするのを、四六時中見ていたい。
……いや、嘘はいけない。本当は見ているだけじゃなくて、熟れたさくらんぼのように赤い彼女のその唇を、「食べてしまいたい」と、そう思う僕はやはり変態なのだろうか。
終点に着くまで、あと三分。
静まれ。静まれ。心臓の音。電車の音にまぎれて、わからなくなってしまえ。
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