大丈夫、きっと叶うから

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(3) 教室の扉を開けると、彼の後ろ姿が見えた。最前列、教壇からすぐ近くのその席で、彼は黒板と向かい合いながら机に腰掛けていた。目を凝らすと、両耳にイヤホンをつけていて、微かに音漏れも聞こえて来る。こちらの存在にはまだ気付いていないようだった。私は懐に忍ばせておいた封筒から中身を取り出した。 "樋口君と付き合えますように" 何時間か前に綴ったその文字を何往復か眺めてから、私はクシャリと紙を丸めてその場に落とした。 教室を見渡すと、窓側に設置された本棚の上に小さな向日葵が数本飾ってある。私は徐に花瓶の中の向日葵たちを取り出して、一輪一輪をじっくりと眺めてみた。 ──花言葉、何だっけ……? そんなことを考えながらも、次の瞬間にはその花々を一本残らず床に放り投げていた。
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