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「はーい、じゃあここで宿題提出ターイム!」
そのとき彩花は高らかに声を上げた。
「えっ、早くない? もうちょっと見てようよー」
「ダメダメダメ! ピークが来るのはこれからなんだから、やるなら今今!」
もう少し星空を堪能していたかった七海は彩花の提案をすぐさま却下しようとしたが、一度エンジンのかかった彼女は誰にも止められない。
「はやくー、はやくー!」
彩花の声に急かされて、私たちふたりは持参した"宿題"を彼女に提出した。
『願い事を100%叶えるおまじない』あまり信じ難いが、彩花曰くかなりの効き目があるらしい。
まず自分の叶えたいことを紙に書く。紙の素材や大きさは問わない。また願い事は誰にも見られてはいけない。彩花は回収した三つの封筒を椅子の上に置き、自分たちが南西の方角を向くように調整した。
「よし、完成っ!」
すべての準備が整うと彩花は胸の前でパチンと手を合わせて目を瞑った。それを見ていた七海と私も彼女に続けとばかりに同じポーズで拝み始めた。念じると両手や眉間に少し力が入る。私は充分に念じ切ってから目を開けたが、ふたりはまだ同じポーズのまま拝み続けていた。
──こんなに熱心に何をお願いしてるんだろう?
そんな疑問もよぎったが、あまりに必死に拝み続ける彼女たちを見ているとなんだかこちらが不真面目に思えてきて私は再び拝み始めた。しかし、静寂は長くは続かなかった。
「天に煌く星々よー!!」
彩花が何の前触れもなく大きな声を出したので危うく私の心臓は止まりかけた。私はひどくおどけて目を開けたが、彼女は至って真剣な眼差しで天に訴えかけていた。
「私たち三人の願いを叶え賜えー!!」
「叶え賜えー!」
七海も彩花に続いて声を張り上げていた。
「ほら、友梨も!」
ポカンと見ていた私に気付いた彩花はすかさず声を掛けてきた。
「え? あっ……」
一瞬気後れした。大きな声の出し方はすぐには分からなかった。だが、戸惑う私を急かすことなくふたりは温かい目で見守ってくれていた。私は勇気を振り絞った。
「かっ、叶え賜……」
「「叶え賜えー!!」」
ふたりの圧は尚強い。私は終始圧倒されながらもなんとか声を出して、友人ふたりに置いていかれないように自分の声を天に届け続けた。
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