大丈夫、きっと叶うから

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✳︎ 「はあー! お願いしてたらめっちゃくっちゃお腹すいてきたー!」 祈るのに余程エネルギーを使ったのか、彩花は早速持って来たお菓子の袋を豪快に開け始めた。夜も遅いので最初はあまり食べる気にもなれなかったが、一気にスナック菓子の香りが立ち込めてきて、最終的には誘惑に負けて何個か摘ませて貰った。私たちが余分な栄養補給をしている間にも星はどこからともなく現れては消えていった。星たちが流れる度に私たちは飽きもせず大きな歓声を上げていた。 「ごめんー、ちょっとトイレー」 しばらくすると彩花が慌ただしく席を立った。一度に見える星の数も増えてきたところだったので私はもう少しだけ見ていたらどうかと提案したが、彼女は"ダメ。限界"と吐き捨てながらそそくさと階段を降りて行った。 屋上は私と七海のふたりだけになった。ひとり抜けただけなのにやたら静かだ。非常口からは足音も聞こえて来なければ人の気配も全く感じられない。私は意を決した。 「あのさ……」 七海はすぐに反応してこちらを向いてくれた。だが、次の言葉が出て来なかった私はそのまま息だけを吐き出して萎んでしまった。出来ることならさっきの発言をなかったことにしたかったが、七海がこの状況を放置することはなかった。 「何?」 言葉に詰まっていると、七海は促すように私に声を掛けてくれた。 ──ここまで来たからにはもう後には引けない。 そんな感じがして、私は今度こそ腹を決めた。 「親友の七海だから聞いてほしいことがあるんだけど……」 「うん」 大きく息を吸い込むと、夏の湿った空気が私の肺を満たしていった。 「私さ、隣のクラスの樋口(ひぐち)君のことが好きなんだ」 それを言った瞬間、辺りがより一層静かになった気がした。七海は顔色ひとつ変えない。また迷いが出て来た。困り果てた私は空を見上げたが、こんなときに限って星が流れて来ない。どうやら完全に逃げ場を失ってしまったみたいだ。
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