大丈夫、きっと叶うから

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「それで?」 しばらくして七海が口を開いた。空を見ていた私は隣にいる彼女に視線を向けたが、七海も私と同じように空を見上げていてどんな表情でこちらに問いかけているかは分からなかった。ふと椅子の上に置きっ放しになっている願い事が目に入って私は少し唇を噛んだ。 「願い事にも書いたんだ。"樋口君と付き合えますように"って……でも私見てるんだ。彩花が樋口君と何回も一緒に帰ってるところ……彩花は明るくて美人だし、彩花と話しているときの樋口君はすっごい笑顔だし……もしかしたら、ふたりは付き合ってるんじゃないかって思うの」 七海は黙っていた。さっきから目も泳いでいるし明らかに動揺しているように見える。それは勘の鈍い私でもすぐに察知することができた。だから、私は今ある思いをありのまま七海に打ち明けた。 「別にきっかけとかはないんだ。廊下ですれ違う程度できちんと会って話したこともないし……でも見かける度にもっと話してみたいなぁとか、仲良くなりたいなぁって思うの。たぶん一目惚れってやつだよね……もう彩花と付き合っているならそれはそれで諦めようとも思ったんだけど……ほら今年で高校最後じゃん? だから、たとえ振られたとしても、自分の気持ちを伝えた方がすっきりするんじゃないかなって思ったり……」 そのとき、顔の前を何かが遮った。見ると七海がこちらに封筒を差し出している。現在椅子の上に置いてある封筒は二つ。目視すると真ん中の封筒がないので、七海の手の中にあるのは私の書いた願い事で間違いなさそうだった。
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