大丈夫、きっと叶うから

9/14
前へ
/14ページ
次へ
「そういうこと! さすが飲み込みが早い! そうと分かれば彼の待つ教室に今すぐ向かうのだっ!」 「1組の教室でもう彼スタンバイしてるから! あとは友梨が教室に入って思いの丈を彼にぶつけるのみっ!」 ふたりともまるで試合前のボクサーを叱咤激励するトレーナーのようだった。私は彼女たちにガッチリと体を掴まれたまま彼の待つ教室へ誘れた。 「無理無理無理っ! まだ心の準備が……」 「大丈夫! 告白終わるまで教室の外で待っててあげるから!」 「そうだよ! こんなチャンス二度と巡って来ないかもよ?」 心拍はどんどん高まっていく。だがそれと同時に、とある疑問が私の中に浮かび上がって来た。これは間違いなく私にとって初めての恋であり初めての告白だ。よっていま感じているこの胸の高鳴りも初めて体験するもののはずだった。しかし、実際に感じ取ったそれは既に体験済みのものだった。まるでタンスの奥底で昔よく着ていたお気に入りの服を見つけたときのような……甘酸っぱさより懐かしさが勝るような感覚に私は陥っていた。 「あっ!」 1組の教室を目前にして、突然彩花が声を上げた。彼女の視線を追うと、沢山の星々が溢れ落ちていく様が廊下の窓から確認出来た。その様子はまるで…… そこまで考えたとき、不意に私の思考は停止した。何故ならこれも見たことがあるような景色に思えたからである。 ──天体観測なんて生まれて初めてのはずなのに…… しかし次の瞬間、それがどこで見た景色なのか一気に頭の中で合致して、私は胸のざわつきを覚えた。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加