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ゴミ箱の手日記
――凛桜の仕事は介護福祉士で、主に歩行者の手伝いや掃除などを任されている。そんな彼女は休憩時間に、
「はぁ〜っ」
昨夜の彼氏の事を引きずりため息を吐きつつノートを出して勉強をし始めだした。
「勉強をするの?」
「あたし介護の国家資格もってないの、だから」
「偉いのね」
「そ、そんなことないわよ」
資格のない人は仕事に制限をかけられる。だから国家資格を取れば制限もなくなり給料も上がるため一石二鳥というが、誰でもできる事ではない。立派である。
仕事も優しく丁寧な彼女でも家に帰ると、
「ぷはー······ああ〜」
ビールを飲むが上の空でどうしてあげて良いのか難しいと思っていたサイネリアに、
「ねえ妖精ちゃんさあ、こっちきてよ」
少し酔っている感じがしたが近づくと、
「なに······ちょっと」
サイネリアを抱きしめスリスリと頭や頬を撫でてきた。
「いいじゃ〜ん」
これも凛桜の為になってるのかもと思ったら今度は、
「ふえぇぇ〜ん」
泣き始めるという事を繰り返す1日となった······。
しばらくそんな日が続いて一週間が過ぎた頃、また酔っぱらって泣きじゃくるのを慰めて眠りについた時、
「あら?」
ふと写真が置いてあった所の手日記がない。気になってゴミ箱を見たら捨ててあり、
「どうして······ごめんなさいっ」
謝りつつ手日記を拾い上げて中身をサッと見てみると気になる文面がいくつかあった。
『4月1日、無料の出会い系アプリを始めた。早く彼氏ほしい』
『4月7日、気になる人ができた。なんとか者にしないと』
『4月24日、ついに付き合うことに、しあわせ〜』
「ふ〜ん、出会い系で会った彼氏だったのね」
少し飛ばすと、
『7月24日、付き合って3ヶ月、プラネタリウムに行きたいから今週にと彼氏を誘い行く事に、やったねっ!』
しかし、
『7月26日、ムカつくー、LINEで突然仕事が入って行けなくなった〜、も〜、行きたかったのに〜』
ここから書いてある日付が飛んでいる。
『9月になったけど、あれから彼氏と会ってない。仕事そんなに大変なのかな〜』
『10月14日、思い返すと今日で会ったのは3回、少くない、もっと会いたい······』
『12月、会えるのはクリスマスか〜、今度はサプライズでこっそり先に待ってよ〜』
このあと自分と出会ったと確認して手日記を閉じる。
「はぁーっ、大好きだったのね······彼氏のこと」
日記からは甘酸っぱい彼への想いが伝わってきた。それだけにあの時のベンチで泣いていた傷は浅くはない。その時、
「う〜ん······スースー」
ビクついたが起きはしなかったため安心する。気付かれたら気まずいと感じてタンスの裏に手日記を隠し、
「なにをしてあげれば、良いのかなぁ」
この夜サイネリアはずっと夜中まで考えていた。彼女を元気にする方法を······。
そして午前3時過ぎに思いつき、
「これなら、凛桜の自信になるはずだわ」
彼女は行動に移す······。
早朝、
「おーい、サイネリア〜、おーい」
「う〜ん、あら? 寝ちゃったみたい」
テーブルに一緒に眠ってしまったようで目を擦る。
「ほらっ、仕事行くよ」
「あ〜あたし、今日は家に居ていいかな?」
「え? いいけど」
「あ、あとペンとノート借りるわね」
そう言って凛桜に許可を得て今日1日マンションに籠もることに。彼女は少し気にしながらも仕事へと向かって行った······。
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