40人が本棚に入れています
本棚に追加
「「さいしょはグー!」」
何やら賑やかな声がする。
近寄ってみると、タカくんとユイちゃんが向かい合って手を出し合っていた。
「じゃんけん、」
「いんじゃん、」
握った手を一緒に振って、声まで揃えてる。
なんだかんだ言っても仲がいいのよね、この二人。
「「ほいっ」」
ユイちゃんは開いた手のひら、タカくんは握りこぶし。
「やった、うちの勝ちや!」
「負けた……」
ユイちゃんは両手を上げて大喜び。反対に、タカくんはガックリ肩を落としてる。
あたしにはよく分からないけど、タカくんのガックリした顔なんて珍しくもなんともない。
でもあんまりにもしょげてるタカくんがかわいそうだから、「ドンマイ」って声をかけてあげた。
「エトォォォ~、おまえは優しいなぁ」
「ちょっと!それじゃうちが優しくないみたいやんか」
ユイちゃんにギロっと睨まれたタカくんは、「そ、そんなこと言ってないでしょ……」とたじろいだ。
口は災いの元。気を付けようね、タカくん。
タカくんに抱き上げられたあたしは、彼を見上げながらそう思った。
「じゃあ最後の一個はうちが貰うで」
「くぅ~、頂き物の高級アイス~~……すごく美味しかったのになぁ……」
どうやらアイスの最後の一個を賭けた勝負だったみたいね。
ユイちゃんがせっせとスプーンを口に運ぶのを、タカくんがすごく羨ましそうに見てる。
「もう……しゃあないなぁ。はい、一口だけよ?」
ユイちゃんがアイスの乗ったスプーンをタカくんに差し出した。
「やった!ユイちゃんありがとう!」
タカくんがそれにパクリと食いついた。
タカくん、とっても嬉しそう。
良かったわね、タカくん。
最初のコメントを投稿しよう!