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「「さいしょはグー!」」
大きな声にぴくっと耳が反応した。
ヒトがせっかくイイキモチで寝てたって言うのに……
「じゃんけん、」
「いんじゃん、」
あの二人、またやってる。
どうせタカくんがまた負けるんでしょ?
べつに見てたいわけじゃないのに、あたしの目が勝手に動く手を追ってしまう。
「「ほいっ」」
「おぉっ!」
「もう~、負けてしもたやんか~」
あれ?珍しくユイちゃんが悔しがってる。
「今日はうちが風呂掃除当番か~。でも負けたもんはしゃあないなぁ……」
どうやら今回はお風呂掃除を決める勝負だったみたい。
渋々立ち上がったユイちゃんが「あっ、」と何かを思い出したように言った。
「そうや。軟膏塗るの忘れとったわ」
「どうかしたの?」
「いや、たいしたことあれへんのやけど、さっきちょっと手ぇヤケドしてな……」
「え、そうなの?大丈夫?」
「うん。すぐ冷やしたから水ぶくれにはなってないねんけどな?まだちょっとヒリヒリすんねん」
「そっかぁ。ちゃんと軟膏塗らないとね」
「すぐ塗るわ。……あっ!」
「まだ何かあった?」
「今軟膏塗っても、風呂掃除ですぐ取れてしまうやんなぁ……」
「本当だ。じゃあ僕が風呂掃除やっておくよ」
「本当!?助かるわぁ。おおきにな、タカくん」
「ユイちゃんの手に、ヤケドの跡が残ったらいけないからね」
タカくんってば優しいのね♡
でも、それなら最初からタカくんがやってあげれば良かったんじゃない?
そしたらあたしの安眠も守られたのに!
もうタカくんったら!気が利かないったらないわ!
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