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「あぁっ、また!」
「ああ~……ごめん……」
「もうさっきから何回目なん⁉ごめんで済んだら警察いらんやろ。お巡りさんもえらい助かりはるわ」
またタカくんが怒られている。
いったい今回はなんでユイちゃんを怒らせたのかな?
少し離れた窓辺から、二人の方を見た。
リビングのソファーに座ったユイちゃん。いつものポジション。
でもなぜかタカくんは彼女の隣に座らずに、目の前の床に胡坐を掻いている。
そのまま黙って見ていたら、タカくんが申し訳なさそうな顔でユイちゃんを見上げた。
「ご、ごめんね?……今度はちゃんとはみ出さないように気を付けるから」
「もう…今度こそ頼むで、タカくん」
肯いたタカくんがユイちゃんの足先を手で持って、そこに顔を近付けた。
なにやってるんだろ?ユイちゃんの足のニオイの確認?あたしも時々やってるけど。
ニオイと言えば、さっきからちょっと嫌なニオイが漂っている。鼻にツンと来るニオイが嫌で、開いている窓の近くに来たんだった。外に出ても良かったんだけど、残念ながら外は雨。あたし、濡れるのはキライなの。
ツンとしたニオイに顔をしかめていると、タカくんが右手に持った何かをユイちゃんの足の上で少しずつ動かしているのが目に入った。
「そこ、手早く!ぷるぷるしないで!はみ出すやんか」
「ちょっ、ユイちゃん動かないで。ズレるから」
「ヒトのせいにしたらあかんで、タカくん」
「………」
ユイちゃんの指導はいつだってスパルタだ。
愛のムチとかっていうけど、愛がこもっているのかちょっとあやしい。ただのムチじゃないの?
でも叱られるタカくんは、いつもそんなにイヤそうじゃない。よっぽどユイちゃんのことが好きなのか、もしくはよっぽどの“どM”かのどっちかじゃないかな。
ああ、“どっちも”、という説もあるわね。
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