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腕を組んでソファーに座るユイちゃんに、黙って彼女の足に何かを塗るタカくん。
なんとなく何をしているのか気になって、あたしはよいしょ、と腰を上げて近付いてみることにした。ニオイはちょっとだけ我慢。
「あっ、」
「またなん⁉またはみ出したん?」
「いや、ちがう、はみ出してないけど、……あ、こら、エト。今はダメだって」
えー。だって気になるんだもん。
タカくんが何をしているのか見てみたくて、彼の膝の上に手をついて、腕の上から覗き込んだ。
タカくんが持っているのはキャップの先に小さな筆が付いたもの。ツンとしたニオイもここからやってくるみたい。
細かく動く手先が気になって、ちょっとそれを突いてみる。
「ああっ、やめて、エト」
タカくんが叫んだ。そう言うんなら、動かすのやめたらいいじゃん?
あたしの手から逃れようとタカくんが右手を上にあげるから、追いかけるみたいにあたしも伸びあがる。逃げられると追いかけたくなっちゃうんだもん、仕方ないでしょ?
「エ~ト~~~」
タカくんが悲痛な声であたしを呼んだ時、あたしの体がふわりと浮いた。
「もう、エト。今足ネイルしてるんやから邪魔したらあかんよ」
あたしを腕に抱いたユイちゃんが、タカくんに向けたものより何倍も優しい声で言う。
ユイちゃんがそう言うなら仕方ないわね。「はーい」って返事をした。
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