第一話 イヤなニオイの巻

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「エトはユイちゃんの言うことはちゃんと聞くんだな」 「そりゃ、日ごろの行いの違いちゃうのん?誰がご飯くれるか、世話してくれるのか、エトはちゃんと分かってくれてるんよ。なぁ、エト?」 頭をよしよしと撫でられると嬉しくなって、その手に額を押し付ける。 「俺だって結構世話してると思うんだけどな……」 少し不服げにタカくんがぼやいている。 「そんなんどうでもええから、はよ手ぇ動かす!乾いたら細いゴールドのでラインも入れてや」 「ええっ!ラインも?」 「あとトップコートも二度塗りね」 「……はいはい」 「“はい”は一回やろ。いつも言ってるやんか」 「……はい」 ユイちゃんが私をソファーの上に下ろしたから、ひょいっと背もたれに上がって反対側に降りた。身軽なのがあたしの長所。そのままさっきの窓辺まで戻る。どうやら雨は止んだみたい。 ちょっとおでかけしてこようかな。 イヤなニオイもするし、うるさくてのんびりお昼寝もできないし。 湿気を含んだ風に揺れるカーテンをくぐり、網戸に爪を掛ける。そのまま横に少し動かすと難なく網戸が開いた。 「ああっ、こら、エト!網戸から出たらあかん!」 ユイちゃんの声は聞こえていたけど、振り向かずそのまま窓からぴょんと飛び降りた。 「もう!また網戸破れたやんかぁ………タカくん」 「はい」 「頼んだで」 「はい」 「でも先にネイルの続き!」 「……はい」 網戸を直す係がいて良かったわね、ユイちゃん。 後ろを振り返ることなくそう思いながら、あたしはいつものお散歩コースへと繰り出したのだった。 つづく・・・かも?
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