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「エトはユイちゃんの言うことはちゃんと聞くんだな」
「そりゃ、日ごろの行いの違いちゃうのん?誰がご飯くれるか、世話してくれるのか、エトはちゃんと分かってくれてるんよ。なぁ、エト?」
頭をよしよしと撫でられると嬉しくなって、その手に額を押し付ける。
「俺だって結構世話してると思うんだけどな……」
少し不服げにタカくんがぼやいている。
「そんなんどうでもええから、はよ手ぇ動かす!乾いたら細いゴールドのでラインも入れてや」
「ええっ!ラインも?」
「あとトップコートも二度塗りね」
「……はいはい」
「“はい”は一回やろ。いつも言ってるやんか」
「……はい」
ユイちゃんが私をソファーの上に下ろしたから、ひょいっと背もたれに上がって反対側に降りた。身軽なのがあたしの長所。そのままさっきの窓辺まで戻る。どうやら雨は止んだみたい。
ちょっとおでかけしてこようかな。
イヤなニオイもするし、うるさくてのんびりお昼寝もできないし。
湿気を含んだ風に揺れるカーテンをくぐり、網戸に爪を掛ける。そのまま横に少し動かすと難なく網戸が開いた。
「ああっ、こら、エト!網戸から出たらあかん!」
ユイちゃんの声は聞こえていたけど、振り向かずそのまま窓からぴょんと飛び降りた。
「もう!また網戸破れたやんかぁ………タカくん」
「はい」
「頼んだで」
「はい」
「でも先にネイルの続き!」
「……はい」
網戸を直す係がいて良かったわね、ユイちゃん。
後ろを振り返ることなくそう思いながら、あたしはいつものお散歩コースへと繰り出したのだった。
つづく・・・かも?
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