第二話 いいニオイの巻

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「今日のパエリア、我ながらよう出来てるやん」 ご機嫌で自分を褒めるユイちゃん。 「うん、ほんとだね」 あれ?タカくん、そこでおしまい?それじゃまたユイちゃんに怒られちゃうよ? そう思ってたら、やっぱりジロリと睨まれて「あっ」と焦った顔をするタカくん。 「そ、それに、この……牛肉のシチューも、すごく美味しいよ!時間かかったでしょ?もしかして昼から作ってくれた?」 「ああ、それ?」 ユイちゃんの顔が明るくなった。 よし。機嫌が直りつつあるよ?頑張れタカくん! 「なんと三十分しか煮込んでないねん!」 「え、すごいね。コクもあるしお肉も柔らかいよ?」 「秘密知りたい?」 「うんうん」 ドヤ顔のユイちゃん。頷くタカくん。 ユイちゃんがおもむろに立ち上がるとキッチンへ行った。そして戻ってくると、後ろにやった手をおもむろに出した。 「じゃじゃーん!これや!」 ユイちゃんが出したのは黒い空き缶。 「これで煮込んだんよ。その名も“アイルランド風黒ビール煮込み”や!」 得意げな顔のユイちゃんの前で、タカくんが目を見開いている。 「そ、それ……」 「なに?」 「それ、全部使っちゃったの?………」 「なに?あかんかったん?」 「楽しみに取っておいた最後の一本だったのに………」 「そんならはよ飲みや?ずっと冷蔵庫に入りっぱなしやったから、いらんのやと思っとったわ」 ガックリと項垂れるタカくんに、ユイちゃんは大きな瞳を丸くして小首を傾げた。 「まあ、こうして美味しくなったんやからえぇんとちゃう?お腹に入れば一緒やろ?」 ユイちゃんはいつもの可愛らしい顔で、にっこりと笑った。 つづく。・・・・・・はず
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