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「―――翔多、まだ痛い?」
「……痛い……」
初めての情交の後、浩貴は翔多を自分の腕の中に包み込み抱きしめていた。
愛の交わりは翔多に少し無理を強いてしまったようで、すっかり血の気が引いた青白い顔をしている。
「ごめんな……」
浩貴が翔多の髪を優しく撫ぜながら謝ると、彼の大きな瞳が軽く睨んで来る。
「謝ったりするなよ。確かに……痛かったけど……嫌じゃなかったし。……ううん、なんだか、その、すごく幸せ、だったし……だから……」
ちょっとだけ怒ったような声色で呟き、蒼白だった翔多の顔色に少し朱がさす。
「翔多……」
あー、どうして、こいつはこんなに可愛いんだ?
浩貴が微笑んで翔多を見つめると、翔多は照れくさそうに目を逸らした。
「翔多。翔多」
何度も名まえを呼んで、彼の小さな頭を自分の腕に抱きしめると、
「浩貴ー、苦しいー」
翔多の口調がいつもの少しふざけた様なモノに戻り、浩貴の腕の中でもがく。
翔多を解放してやり、視線を合わせると、どちらからともなく口づけを交わす。
そうして、二人は狭いベッドで寄り添って眠りについたのだった。
後日談として―――。
自分はアルコールに強いとあれだけ得意げに宣言して、実際、毎晩のように伯父さんの晩酌に付き合ってると言ってた翔多が、何故あんなにちょっとのビールで酔っぱらってしまったのか、不思議に思った浩貴はそれとなく翔多の伯母さんに聞いてみた。
伯母さんが大笑いしながら教えてくれた答えはというと……。
「翔多には内緒だけど、あの子のコップに入れてきてあげるのは主人が飲んでいる発泡酒じゃなくって、今流行の、ほら、ノンアルコールビールなの。全くアルコール分の入ってないやつね。いわゆるビール味の飲み物なのよ。それでも、あの子“なんか酔っちゃった~”とか言ってるから、要は気分の問題っていうか、元々翔多はああいう性格だからね~。……あ,浩貴くん、本当にこの事はくれぐれも翔多には内緒よ」
ということだった。
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