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対して、自分はというと、実はキスの経験もなかった。
いや、第一女の子と付き合った事さえないのだ。
勿論今までにほのかな恋心めいたものを抱いた女の子は何人かいた。
しかし、決まってその女の子からは友だち以上には見て貰えないのである。絶対に楽しい友達止まり。
……そんなふうに恋愛には恵まれなかった翔多が、胸を焦がすような恋に落ちた相手は女の子ではなかった。
誰もが憧れる学校一の人気者で、親友でもある園田浩貴だった。
浩貴とキスはした。
翔多にとってのファーストキス。
そして、そのキスと同時に浩貴に告白されたのだ。
思えば、翔多はその随分前から心の奥深くで、ずっと浩貴への恋心を募らせていた様な気もして。
この時から浩貴と翔多は親友から恋人へとその関係が大きく変わったのである。
大人のキス……いわゆるディープキス、というのを初めて経験したのもファーストキスと同じく翔多の部屋だった。
いつもの様におやつのショートケーキを食べながら、二人で他愛もない話をしていて、ふ、と沈黙が訪れた。
その瞬間、浩貴が翔多を少し強引に引き寄せて、唇を重ねて舌を入れて来た。
初めはすごくびっくりしてしまい、慌てて逃げようとしたが、浩貴の手は思いの他強く翔多の体を捕らえていて。
そのまま彼に口内を蹂躙され続けた。
その内に、翔多の頭は段々痺れたみたいになって来て、気付けば浩貴に縋りつき、彼の与えてくれる感覚に酔いしれていた。
浩貴はキスがうまい、と思う。
翔多は他の相手を知らないから比べる術はないけれど。
それでも浩貴がキスの経験に富んでいることは分かって……やはり胸が痛むのだ。
俺は浩貴だけなのに。
浩貴は俺だけじゃない。
それはキス以上もそうなのだろうか……?
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