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翔多は母方の伯父さんところに下宿。
浩貴にはまだ小学生の弟がいる。
そんな環境では二人の仲がキス以上に進むことは難しい。
それに本音を言うと、翔多はちょっと怖くもあったのだ。キス以上の関係に進むのが。
……そういう諸々の理由から二人の関係は大人のキスの段階で暫く停滞していたが、やはり翔多も高校生の男の子。
浩貴を思って一人自分を慰めた事はもう数え切れなかったし、恋心というモノは成長を続けるらしい。
浩貴と、もっともっと近づきたくて堪らない。
心も体も浩貴を独り占めしたい。
―――そんな時、思いがけず二人の仲を進展させる環境が与えられる事になった。
伯父さん夫婦が、熱海に旅行に行くと言う。
「翔多も一人じゃ心細いでしょ? 私たちもあなた一人じゃ心配だし。だから、浩貴くんに泊まりに来て貰いなさいよ」
ニコニコとご機嫌な伯母さんの言葉に、
「えっ……?」
翔多の顔に複雑な表情が浮かんだのを見て、伯父さんも伯母さんもなにを勘違いしたのか、笑いながら言った。
「分かってる。缶ビールの一本ぐらいなら飲んでいいから。一本だけだぞ?」
「……うん」
こうして、浩貴と翔多、二人きりの夜、という環境は整えられたのである。
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