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色々と想像してしまい、少々のぼせ気味で風呂から上がると、翔多はキッチンに行き、冷蔵庫からよく冷えた缶ビールを二本取り出す。
緊張で手が少し震えている。
ビールを落としてしまわないようにしっかりと腕に抱きながら、翔多は静かに浩貴が待つ裏庭へ向かった。
柄にもなくガーデニングが趣味である伯父さんの、手入れの行き届いた裏庭に置いてあるお洒落なデッキチェアーに浩貴は座っていた。
その端整な横顔がひどく緊張しているのが分かる。
……浩貴も緊張、すごくしてるんだー。
自分と同じドキドキを浩貴もまた感じてくれているのだと思うと、切なく甘く心が疼く。
翔多はゆっくりと静かに彼に近づくと、その頬に冷たい缶ビールを当てた。
「浩貴―、お待たせー」
いつもの能天気な声は、少し震えていたが、
「わっ!?」
浩貴はそれには気づかず、文字通り飛び上がるほど驚いている。
「びっくりしたー。なに? ビール?」
「うん。伯父さんが一人一本だけに限り飲んでいいって」
ビールはプレミアムモルツ。普段伯父さんが飲んでいる発泡酒より数段高い物だ。
ビールを飲んだら、少しはこの緊張感も和らぐかな……?
そんなふうに考えながら、小さく震え続けている手でプルトップを開けた。
「かんぱーい!」
缶ビールを軽く合わせたあと、翔多は宣言して見せた。
「オレ、アルコールに、ちょー、強いよー」
それは本当の事である。伯父さんの晩酌に毎晩の様に付き合っている。 小さなコップに一杯と決められているが、それでも一応お酒を飲むことには慣れてると言ってもいいだろう。……多分。
「へぇ……」
翔多の自信満々の言葉を聞き、浩貴がちょっと臆した様なカオをしたのが可愛かった。
浩貴がどれくらいアルコールに強いかは知らないが、少なくとも先にオレが酔いつぶれるという事はない筈だ。……多分。
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