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家が揺れている。
地震? 違う? ? ?
ふわふわふわ。
さっきまでの緊張は和らぎ、なんだかとっても楽しい。
気が付いた時には、翔多は浩貴に半分抱きかかえられる様にして、二階の自分の部屋へと続く階段を上っていた。
浩貴が呆れた様に呟いてるのが、ポワンとした頭に聞こえて来る。
「おかしいと思ったんだよ。おまえがお酒に、ちょー、強いなんて」
えー? オレお酒に強いよー。
だって毎晩のように伯父さんの晩酌に付き合って鍛えてるもんー。
……あれ? やっぱり家揺れてない?
酔っぱらってないと思うけど。でも。
浩貴が翔多を引きずるようにして部屋に連れて来てくれて、ゆっくりとカーペットの上に座らせてくれる。
ここにきて漸く、もしかしたら自分は酔っぱらってしまったのかも、と思う翔多だった。
このふわふわした妙に楽しい気分。こういうのを酔っぱらったというのではないか?
でも、なんでだろ?
いつも伯父さんと一緒に飲んでも、こんな風に酔っぱらったことはないのに。
もしかしたら、浩貴、オレのビールにこっそり目薬入れたんじゃ……。
嘘か真かアルコール類に目薬を入れると酔いが回るのが早くなるらしいという説がある。
あ、でも、オレがビール持って来たんだっけ?
浩貴に目薬入れる暇はないか。
それにしても、こんな筈じゃなかったのに。
いろいろ想像を巡らせ、予定をしていた展開は、酔いつぶれた浩貴をオレが介抱してあげてー、そのままロマンチックに押し倒すというものだったのに。
これじゃ無理だ。
頭は半分以上アルコールに支配されてて、体にも力が入んない。
「大丈夫か? 翔多」
浩貴が心配そうに顔を覗き込んで聞いてくれる。
浩貴ってホント優しいな。
なんかオレ、今なら、どんな恥ずかしい愛の言葉でも言えそうな気がする。
もしかしたら、酔っぱらってしまって良かったのかもしんない。
「だいじょぶー。浩貴ってホント優しいね。大好き」
翔多を見つめる浩貴の瞳が熱っぽく潤んでいた。それに見惚れてしまう。
ホントーに綺麗な、整った顔立ちしてるな、浩貴って。その上色っぽくって。
こうして浩貴の顔見てると幸せでたまんない。
こんなにかっこよくて優しい人と両想いになれるなんてホント夢みたいだ……って今までのこと全部夢とかじゃないよね? 夢だったりしたらさすがにオレ、泣いちゃう。
ぐるぐるとそんな事を考えながら翔多が浩貴を見ていると、急に強く抱きしめられた。
そうして、強引に口づけられる。
激しいキス、だった。
呼吸困難になりそうになり、翔多が少し口を開くと、浩貴の舌が入って来て翔多の舌を絡め取る。
深くて長いそのキスは少しビールの味がした。
唇を離してから、浩貴は熱い吐息交じりに囁いた。
「好きだよ……。翔多……。なあ、シていい?」
ああ、オレが押し倒される側になっちゃうんだ……。
霞がかかったような頭でそう思いながらも。
……いいや。浩貴になら……。
「……うん……」
翔多はゆっくりと頷いた。
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