Side.Hirotaka

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Side.Hirotaka

 翔多と思いが通じ合ってからというもの、浩貴の心は翔多一色になったと言っても過言ではない。  初めてキスしたのは翔多の部屋。  ハプニングの様なキスで、同時に自分の、翔多への本当の気持ちを気付かせるきっかけになった。  二回目のキスは浩貴の自宅マンションの前にある公園のベンチで。  翔多も浩貴が好きだと言ってくれた時だった。  そして。  初めてディープキスをしたのは翔多の部屋で、他愛もない話をしていて、ふ、と沈黙が訪れて、自分の方から彼に口づけをした。  段々激しくなり舌を絡めて長い時間お互いを貪りあった。  翔多とのキスはとても、とても甘くて、気持ちがいい。だから……。  だから、もうキスだけでは足りない。翔多の全てが欲しい―――。  ……とはいえ、中々チャンスがないんだよなー。  浩貴の家庭は母親が八年前に他界してる為、父親と弟の男三人所帯で、マンションの三階に住んでいる。  父親の帰宅時間はだいたい決まっているので、ともかく、小学生の弟の浩之(ひろゆき)は帰って来る時間もマチマチな上、何度注意しても三回に一度はノックをせずに浩貴の部屋のドアを開ける。  一方、翔多はというと、実は大会社の御曹司で、実家はとある高級住宅街にある大邸宅だが、今は母親方の伯父さん夫婦の家に下宿の身である。 伯母さんが専業主婦の為、家にいる事が多い上社交的な性格で、近所の主婦たちが頻繁に訪れる。  どちらも恋人同士――それも男同士――が親密に愛をかわす場所としてはイマイチ不向きと言えよう。  頭ん中では何回翔多の事をヤッちまった事か。  もう凄い事してるぜ。オレ。  だが、どんなヤラシイ事や口では言えない事を翔多としていようが、それが妄想や夢の中ではなんの意味もない。  いや、より悶々とした欲望を持て余してしまうはめになる。  勿論翔多との普通の健全なデート……映画を見に行ったり、買い物に行ったり、そういうのも凄く楽しい。  でも、二人は恋人同士なのだ。  それも元気いっぱいの高校生の男の子。  相手の全てが欲しい、翔多とセックスしたい……そう思うのは当然だろう。  はぁ……。  浩貴の口から思わずため息が漏れる。
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