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「浩貴―、おまたせー」
翔多の明るい声と共に頬に冷たい物が当てられる。
「わっ!」
翔多を待ってる間、異常と言っていいくらいの緊張状態にあった浩貴は飛び上がるほど驚いてしまった。
見ると翔多も自分と同じようなTシャツとスエット姿で、缶ビールを片手に一本ずつ持っている。
「……びっくりしたー。なに? ビール?」
「うん。伯父さんが一人一本だけに限り飲んでもいいって」
「へー。気が利くなー。伯父さん。なに、プレミアムモルツって伯父さんいいビール飲んでんだな」
「浩貴が来るからって、オレが買わせたんだよ。伯父さん、オレでも発泡酒しか飲んでないのにって、文句言ってたけど」
翔多がキャラキャラと笑う。
まだ髪も濡れていて、微かに石鹸の香りが漂ってくる。
ほんのりと頬を上気させた湯上がりの翔多は文句なしに色っぽく、浩貴の下腹部が甘く疼く。
……うわ。たまんねー……。
もうそこの縁側で押し倒しちまおうか? いや、いや。まずムードを作って、肩なんか抱いて、キスを……。
浩貴が何とか色っぽい流れに持っていこうと策をめぐらせている間に、翔多はテーブルを挟んだ向こうの椅子に座ってしまった。
肩透かしをくらった形になった浩貴は、なんとなくバツの悪い思いをしているのに、翔多はそれに全く気付いた風もなく、嬉しそうにビールのプルトップを開けて、
「かんぱーい!」
と、浩貴のビールに自分のそれをコンと当ててくる。
「乾杯」
浩貴も気を取り直して、プルトップを開けてそれに応えた。
翔多はビールをコクリと一口飲んでから、得意げな口ぶりで浩貴に宣言した。
「言わせて貰うけどさ、オレ、ちょー、アルコールに強いよ。いつも伯父さんの晩酌に付き合ってるからねー」
「へぇー」
たかが350mlの缶ビール一本で、強いも弱いもないだろう……と内心では思いながらも、浩貴はちょっとだけ心配になった。
浩貴だってビールをはじめ、アルコール類を口にするのは勿論初めてではないから、缶ビールの一本ぐらいでまさか前後不覚になる事はないだろうが、今夜は神経が昂ぶっているし、翔多よりも先に酔っぱらってしまって情けない姿を見られたりしたら身も蓋もない。
とりあえず一気に飲むのはやめとこう。
そう自分に言い聞かせた。
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