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「……なにがアルコールに、ちょー、強い、だ」
浩貴はため息交じりに呟く。
「めちゃくちゃ弱いじゃんかよ」
翔多はビールを一口飲んだだけで既に呂律があやしくなり始め、半分近くを飲んだ頃には完全に酔っぱらってしまった。
「なにー? 浩貴―、オレ、酔ってないよ~」
翔多は浩貴に凭れかかって楽しそうに笑う。
「はいはい」
浩貴は翔多を抱きかかえるようにして歩いていた。
密着度が大きくて浩貴の胸の鼓動は張り裂けそうになっているが、とにかく部屋に連れて行かなければ、翔多はあのまま中庭で眠ってしまいそうで。まだビールが残ってると駄々をこねる彼を庭のテーブルから引っ剥がして、二階の部屋へと続く階段を上がっているところだ。
「なに、なに、なに? 浩貴、なんか家揺れてない? 地震? ねー、浩貴―、家揺れてない?」
「揺れてねーよ。おまえが酔っぱらってるんだよ。ほら階段、危ないからちゃんと足ついて」
「えー? オレ酔っぱらってないよ~。だって、お酒、ちょー、強いもん。あのね、毎晩伯父さんの晩酌に付き合ってるから……」
翔多はなにがおかしいのかキャラキャラと笑いながら主張している。
「それはさっき聞いたって。たくっ、おまえ酔うとアホが増すみたいだな」
「あ~、浩貴、ひどいー」
半ば引きずるようにして、翔多を彼の自室に連れて行き、ゆっくりとカーペットの上に座らせてやり、浩貴も隣に座る。
「……やれやれ。翔多? 大丈夫か?」
「だいじょぶー。浩貴ってホント優しいね❤ 大好き」
翔多の言葉に浩貴の胸の鼓動がドキ、と数段跳ね上がる。
翔多の肩越しにベッドが見えて、それがまた浩貴の心を激しくかき乱して。
翔多の大きな瞳はジッと浩貴を見つめていて、アルコールの所為か唇はいつもより紅く、まるで誘う様に少しだけ開かれている。
もうだめ、だった。浩貴の理性の糸はブツリと切れてしまった。
「翔多っ……」
熱く囁くと細い体をおもいきり抱きしめて、その唇に自分の唇を重ねた。
翔多の口内に舌を侵入させて絡ませる。
たどたどしいながらも翔多がそれに応えてくれて、二人は深く長い口づけを交わした。
キスは微かにビールの味がした。
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