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ドアを開けて中へ入ると、犀椰が座って本を読んでいた。
「犀椰。なに、柄にもなく呼び出して。普通に話しかけてくれればよかったのに。」
…無意識に強がってこんな言葉が出たのは自分でもビックリ。
「ああ、悪い。なかなか覚悟決めないと伝えらんねーって思ったから。」
「な、なに?それで。嫌なことなら聞かないよ。」
「あーーー、まあな。
つか来てもらって悪いけど人結構いるから外でよ。」
なんなんだ。
「え、ここ?ここはいんの?」
俺たちが向かったのは同じフロアにある家庭科室だった。勝手にドアを開けて入ってった犀椰の後を追う。
適当に座っててって言われたから座る。
犀椰は冷蔵庫を開けて何か持ってきた。
「白い…箱?」
「そう。ケーキ。開けてみて。」
ケーキ!俺は甘党なので嬉しい!
「なになに、なんでケーキなんかあるのさ。嬉しい。食べる食べるーー... え。これって…
「春陽が好き。恋人にしたいって意味で。」
白い箱の中にはチョコレートケーキがホールで入ってた。ケーキの上に乗ってるプレートには"ハルヒがすき"って書いてあった。
「バレンタインだろ?言うなら今日かなって。
俺さ、言わないで友達のままずっと仲良くしたいって思ってた。でも出会ってから1年経って、また同じように1年過ごしたら卒業なんだなって思ったらさ。
最後の1年間は新しい関係になってもいーじゃんって欲が出た。
お前と、春陽と過ごす時間が楽しいよ。部活もラストスパートで忙しくなるけど、それでも出来る限り一緒に居たい。」
「俺ももっと一緒にいたい。」
勝手に口が動いた。
「あ、いや、あの。俺はバカで今まで恋愛もした事ないから、分かんないことが多くて。でも犀椰といる時はいつも楽しくて、時間が合えばもっと一緒にいたいと思う。。好きとか、分かんないけど。。」
俺が頑張って伝えたあと、少し沈黙になって。
その後はなんか驚くほど事務的だった。
「じゃ、とりあえず付き合ってみっか。」
「え、とりあえずって…なに?」
「大丈夫大丈夫、いつもとあんましかわんねーよ。ただ夕飯とか一緒に出来る限りとろーぜ。」
あ、それいい。
「わかった!いいね!」
「いいだろ。よろしく。てかケーキ食おうぜ。
ちなみにこれ、俺が作ったの」
「ほんとに!?凄い!すごいね作れるんだ!」
「スポンジ買ってきて溶かしたチョコ塗っただけだけどな。ホイップも買ってきたやつ。」
「十分凄いよ!俺レシピ書いてある事よく分かんなくて料理苦手。。」
「でも蜂蜜レモン美味かったよ?」
「それは動画見ながら真似たの!」
「これから試合ある度に作って俺に朝一で渡してほしい。作って、やだ?」
「う、うん、分かった。頑張る!」
俺はケーキを食べながら17歳バレンタインの日に初めてとりあえず彼氏ができたのだった。
おしまい
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