マホウの鏡と幸せのカガミ

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「あの、ね。今日、実は伝えたい事があったんだよ」  やっぱり緊張はする。  でも。 「一緒に、」 「住みませんか?」  言葉が重なった。驚いている私に、各務くんが続けながら何かを差し出した。 「結婚に向けて」  真新しいキーケースに、鍵とキラキラと輝くダイヤモンドのリング。  言葉も出ない。 「結婚、してください」  真っ直ぐな各務くんの瞳に私が映る。 「……――喜んで」  答える声が僅かに震えた。 「偶然、親友さん達の前でのプロポーズになっちゃったけど」 「良いの。一番、信頼のある二人だから」  振り向くと二人は満足そうに笑っている。 「千鶴泣かせたらナンタラとか言いたかったのに、全然、そんな心配なさそうで。逆に千鶴を宜しくお願いね? 各務くん」 「あの、怜、です」 「でも、ソレ。私が先に呼んじゃいけないから。ほら、千鶴」  幸せの連続で放心状態な頭では、涼子が促している先が分からない。 「え?」 「え? じゃなくて。アンタもそのうち各務さんになるんだから、今から慣れる!」  叱咤されてようやく意味を理解し、その途端、別の緊張で鼓動も体も震えた。 「あ、や……う……怜、くん」  恐らく、顔も赤くなっている。 「はい」  嬉しそうな笑みが各務くんの……もとい。怜くんから零れた。 「本当は“くん”も要らないけれど、それはおいおい」  どこかしっかりと、手綱を握られている気がする。
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