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頬が赤くなっていないか気になるけれど、視線が放せない。
「そんな格好でデートなんて来たことなかったのに……私、ホントに今日言えるのかな……?」
この場所から「一緒に、住みませんか」と心の中で言っただけで、心臓が口から飛び出そうだ。
でも、いつまでも待たすわけにいかない。
小さなウエットティッシュのパックを一つ買って店を出ると、彼と同じくらいの女の子たちに声を掛けられているのが目に入った。
「ホラ、ね」
当然だと思う。少し積極的な子なら放ってはおかない。
楽しそうな女の子たちと、穏やかな笑顔で応えている各務くんがすごくシックリと嵌っていて、あの場所に自分が混じる想像が出来ず、足が止まってしまった。
距離にするほども離れていないのに、各務くんは彼女たちと反対側に立っている私に気付いてない。
でも。
この日のために、荒れた肌のケアをして、疲れも癒して、髪も、服も。頭の先から足の先までピカピカにした。
「大丈夫」
小さく、そう呟いた時だった。
「千鶴?」
どこかで聞いた男性の声に呼ばれて振り向くと、大学時代からの友人がショップから出てきた所だった。
「やっぱり、千鶴じゃんっ」
「ケンゴ? わぁ、久しぶり」
体育会系のケンゴは、いつでも明るくパワーが漲(みなぎ)っていて、その分声も大きい。
「千鶴、何こんな所で突っ立ってんだよ。暇なら飲みに行こーぜ」
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