マホウの鏡と幸せのカガミ

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 すぐに人の事をからかうのはケンゴの悪いクセだ。でもそれは本当は仲良くなりたい本心の裏返し。まったく、小学生が大人の皮を被っている。 「ケンゴ、面白がらないで。各務くん、この二人は大学時代からの親友夫婦で」 「今、それはちょっと関係ないから」 「え?」  どこか突き放すような彼の声に取り付く島がない。 「各……務く、ん?」 「あぁ、いや。ちょっと、僕が落ち着くから、それまで待って」  戸惑った顔を見せてしまったのだろう。各務くんは私の表情を見て苦い顔をし、そのまま抱き締める角度を深くして顔を隠してしまった。 「うっわ、超大人じゃん彼氏」  抱き締められたまま茫然と動けなくなってしまった私に、ケンゴがニヤリと嗤う。 「いい加減にしなさいよ、ケンゴ」  涼子の少し低い声に「分かったよ」と素早く引いた。ケンゴは涼子に弱い。惚れた弱みだろう。  でも時間が経つにつれて、周りの目と囁きも気になり始める。 「ね、各務くん、そろそろ良いかな?」 「――で……」  これほど近くで呟かれたのに、言葉が聞き取れなかった。 「各務くん?」 「いつまで、僕は“各務くん”なのかな」  ふぅっと大きく息を吐き出して、ようやく見せてくれた顔は真剣で。 「もっと、千鶴さんの近くに居たいのに、自分でも上手く出来なくて。あの日も突然で。でも、全然それが自然で」 「もっと、おいでよ。近くに」  そう言って笑った。綺麗に笑えていると良い。 「良いの?」
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