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「先、呑んでいて良いよ」
色とりどりのピクルスが盛られた小鉢や、ごま油の香る煮浸し小鉢を用意し終わると、各務くんは入れ替わりでバスルームに向かっていった。
その後ろ姿に、久しぶりに会えたことが嬉しいと鼓動がトクトク弾んでいる。
「たぶん、今は私の方が気持ち大きいと思うんだよ」
若い彼に恥ずかしい思いをさせないように、横に並んでいても浮かないように。
ただ、自分を見ていてもらえるように。
好きでいてもらえるように。
「あ~あぁ、肌荒れしてるし」
ベッドサイドのミニテーブルの上に置いている、化粧水ボトルを手に取り鏡を覗き込むと、カサついた肌に小さな赤いポツポツが。
普段はちゃんと手入れもしているのに、今日は少しタイミングが悪かった。
たっぷりの化粧水の前に少し消毒をしないと。
コットンで優しく撫でたのに、消毒液のアルコールが少し沁みた。
「カガミよ、カガミよ、カガミさん。こんなボロボロの私は恥ずかしい」
次に化粧水を押し込むように、うにゅ~っと頬を押し上げながら、うなだれる。
「頑張ってる証拠だよ」
「っ!」
完全に一人ごとだったのに、返事が返って来て心臓が飛び跳ねた。
慌てて振り向くと、湯上りの各務くんが立っている。Tシャツとスウェットパンツ姿のラフさでも、なぜか最近の彼は色気が増している気がする。
「……心臓に悪いから突然現れないで」
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