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「僕も癒された……迷ったけど、来て良かった」
「迷ったの?」
「明日の仕事予定、聞かなかったでしょ」
確かに。いつもなら不規則なシフトや突然に店長代理なんて任されてしまった私を気にして、次の日が休みなのを確認するメールが入る。
諦めていた所に会えて嬉しかったから、忘れていた。
「聞いたら会いに来られないと思ったんだよ。実際、明日シフト入ってるの知って少し後悔してるし」
少し萎れた声に、ふわふわする甘い心のまま体をずらして視線を合わせる。この距離なら眼鏡が無くても私の顔は見えるはず。
ソッ、と、彼の眼鏡を奪って唇を重ねに行った。
「嬉しかったから、後悔なんて要らないよ」
触れるだけの子供のようなキス。
今度は私から正面で赤く固まる各務くんを抱き締めると、彼の肩越しに壁掛カレンダーが目に入った。
「各務くん、もうすぐ誕生日だね。何が欲しい?」
誕生日にはその人の欲しいものを贈りたいと思っている。大切な人ならなおさら。
私のそんな考えを伝え、過去数回のイベントの時も各務くんはちゃんと“欲しいもの”を答えてくれて、喜んで受け取ってくれた。
今回は何が欲しいのか、わくわくしながら答えを待つ。
「千鶴さん一日独占権」
「なにソレ」
意外な答えに思わず吹き出してしまった。
「本気だよ? 当日じゃなくて良いからさ、繁忙期終わったら休み合わせてデートしよ」
久しぶりのデートの約束に思わず頷いてしまった。
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