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そうして笑う顔も“カガミさん”に映す。確かにちゃんとケアをするようになって、肌艶はよくなった自覚はあるけれど。
「褒められすぎてコワイし、笑えちゃう」
「全然です! 私も千鶴さんのようになりたいです!」
何だか嬉しく、こそばゆい。若さがキラキラしている。
「眩しいなぁ」
呟いたと同時に、鞄に入れていたスマホが鳴り出した。
「店長っ」
画面には思いがけない人の名前。慌てて通話にする。
『糸井さんお疲れ様。ゴメンね、急に倒れちゃって』
向こう側から、落ち着いた穏やかな声が聞こえてきた。
「とんでもないです。お加減いかがですか、心配しました」
声は元気そうだけれど、無理がたたっての事だった為に、あまり楽観的にはなれない。
『ありがとう、もう良くてね。突然の事で迷惑イッパイかけちゃったけど、本部も社員送ってくれるって』
「本当ですか、良かったです」
社員の人員が増えれば私も、店長もギリギリの体力で働かなくて良い。本当に良かった。
『来週から復帰できるからね』
――来週……。来週!
「あの、店長! 本当に急で申し訳ありませんが、来週どうしても一日、お休みが欲しい日がありまして」
各務くんの誕生日。彼は当日じゃなくても良いと言ったけれど、大手会社員の彼には誕生日休暇がある。
今年はたまたま週末で、家族連れが増えるファミリーレストランの仕事は休めないと思っていたけれど。
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