ロード・オブ・プリンセス

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 一ヶ月がたち無事にスマホも直ったけど、以前ほどゲーム浸けになることはなく、平凡でヘルシーな生活は続いている。というより、もうあんな不健康な生き方に戻る意味はない。  余談だけど、完全に直ったはずのスマホからは“ロード・オブ・プリンセス”がキレイさっぱりなくなっていて、そもそもそんなゲームはこの世に存在しなかった。どういうこっちゃ、という話ではあるけれども、巻物が私の手元にある以外別に変なことも起きていないので気にするほどでもない。 「あれ?龍一郎もジョギング?」  私の後ろから、ジャージ姿の龍一郎が走ってきた。流石スポーツ万能男子だっただけあって、私とは比べものにならないほど美しいフォームだ。 「まぁな。お前がよくこの辺で走っているって聞いたから」 「ふーん。じゃあ一緒に走るつもりで?」 「……ああ」  龍一郎と一緒に運動するなんて、ちびっ子同士だった時以来だろうか。あの時も体力差が激しくて、よく助けてもらっていた気がする。  でも、大人になってからまた一緒にっていうのはちょっと不思議な気分。  体がふわふわ浮いているような、そんな感覚。 「お前、さ。最近、キレイになった?」 「は、はい?」  龍一郎が急に、変なことを言い出した。 「その、なんていうか。見た目もそうだけど、内面もっていうか……魅力的?みたいな」 「何言ってるのよ、もう」  しどろもどろな龍一郎。誤魔化すように手をばたつかせている。そんなところが、どこか愛らしい。  でもそんな風に褒められるのはこそばゆくて、私もちょっとわたわたしてしまう。 「こっ、今度の休みにさ、一緒にどこか出掛けないか?」 「別にいいけど、ホントにどうしたのよ龍一郎」 「約束だからな!」  そう言うと龍一郎は全力疾走で去って行った。  一緒に走るつもりだったのに、私を置いて逃げるように。 「まったく、何考えているんだか」  なんて呟きながらも、内心少しわくわくしていた。  龍一郎とのお出掛け、どんな服を着ようか。メイクはどうしようか。どこへ行ってみようか。  走っているからだけじゃない。  胸の鼓動が、どんどん強くなっているのを、私はしっかりと感じ取っていた。  もしかして。  もしかしてなんだけど。  龍一郎のお誘いって、幼なじみの私に対してって意味じゃなくて――  ――なんてね。
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