ロード・オブ・プリンセス

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 見渡すと、そこは深い霧に覆われた森の中。  視線の先には大きく不気味な存在感を放つ山の姿。  ……どういうこと?  さっきまで私は実家のリビングでごろ寝をしていた。それで女神もどきから変なゲームを貰って、それをプレイしようとしたらここに来ていた。 「えぇ……」  ゲームの世界に飛ばされた、という話はよくあるし、実家でも同様の内容の書籍を多く取り扱っている。そんなに興味はないけど流し見程度には内容は知っている。  だがしかし、自分が本当にそんな馬鹿話に巻き込まれることになるなんて。まぁ、それならまず女神の存在にツッコミを入れろという話だけど。 「困るよ~、急にこんな状況に放り込むなんて。私が何したって言うのよ。びっくりするくらい日々何もしていないわよ!?」  なんて困惑して右往左往していると、上空の方から何者かの声が響いてきた。 『ようこそ、“ロード・オブ・プリンセス”の世界へ!』 「あ、なんか始まった」  陽気な司会者のようなハイテンションボイスが鼓膜を震わせる。 『このゲームは理想のプリンセスを育てるために試練をクリアしていくゲームです!クリアしなくてはならない試練は全部で三つ!どれもこれもが超難関、プリンセスになるためには険しい道でも前進あるのみぃっ!』  チュートリアルなのだろうけど、うるさい。しかも質問を挟む機会すら与えないかのようにどんどん説明を続けていく。せめてもう少しゆっくり話すか一時停止出来るようにしてほしい。大事な話が右の耳から左の耳へとストレートに流れてしまっている。 『そしてプレイヤーでありプリンセス候補、そうあなたには試練に役立つアイテムとして三枚のお札が与えられます!しかーしっ!当然ながら効力は一枚につき一回、使い切りサイズ!どこで使うかよく考えてプレイするように!』  そういう話もどこかで聞いたことあるのですが。  私は手の中に出現したお札を握りしめながら、ツッコミを入れたい気持ちを飲み込んだ。 『それではあの、登る者全てを拒絶する魔の山――ニキビ(マウンテン)の先にあるゴールを目指してレッツゴー!』  山の名前が最高に酷い。  なんて思っていると、  ぱぁんっ!    いきなりのスタート。  ピストルの音がするとBGMと声援が巻き起こり、私に「早く走れ」と背中を押してくる。  徒競走か。  何コレ、この有無を言わせぬかんじ。  ゴールしないと元の世界に帰れません、ってところね。  どうしてこうなった。
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